「はたらく」のミスマッチをゼロに。

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理学部生が宇宙に見る夢。いつか、土井 隆雄先生のような宇宙飛行士に。

Writer|木原 弘貴 Writer|木原 弘貴
  • 読了目安時間:10分
  • 更新日:2019.2.27

「パラボリックフライト」で経験した微小重力の世界。

少し話が前後して恐縮ですが、一つ目のパラボリックフライトに関して詳しく教えていただきたいです。そもそもパラボリックフライトとはどのようなものなのでしょうか?

パラボリックフライトとは微小重力を生じさせる方法の1つで、8人乗り程度の小型飛行機に乗って一気に上昇し、その後、急落下を行うことで、機内に20秒間程、微小重力を生じさせるといった感じです。

−なるほど。では、そこで生じる微小重力とは何か教えてください。

無重力に近いのですが、無重力と表現してしまうと厳密には違っているんですね。どうしても10のマイナス6乗G程度残っている状態になるので、あえて微小重力という言い方をしています。

−まだハテナがいっぱいの状態です。笑

そうですよね。例えば、飛行機が放物運動をしていると仮定しましょう。

そして、飛行機が放物運動(ボールを投げた時の動き)をしているということは、重力加速度以外の加速度が加わることなく、飛行機がただただ動いているということを意味するんですね。

すると、地球上には重力が存在するので、飛行機に対する加速度が重力しか加わりません。つまり飛行機にも飛行機の中の人間にも、重力のみが加わっている状況となります。

その状態で飛行機の中から観測した場合、無重力を感じてしまうという仕組みです。この現象はフリーフォールと呼ばれる現象と同じ原理でして。

重力加速度gで自由落下している飛行機の中から、人間がどのように見えるかということを考えていきましょう。

パラボリックフライト中の飛行機の中の視点で見ると、慣性力として上向きの力gがかかっていると考えることができます。

それに加え、人間には下向きの重力gがかかっています。

結果、上向きの力gと下向きの力gが打ち消しあって、飛行機の中の人間にかかる力はゼロにかなり近くなり、微小重力空間となるわけなんです。

-なるほど!そういうことなんですね。

ここまでは無重力が起こる現象についてお話ししたのですが、そう上手くはいかないのが現実ですね。

というのも、どんなに操縦の上手なパイロットであっても、空気抵抗などを打ち消すために一定の操縦が必要となるので、自由落下の状態を作ることが難しいんです。

他にも局所的には重力を打ち消すことができていても、広範囲になると難しいという場合があります。

そのため無重力と言わずに、微小重力と呼んでいるわけです。

-詳しくありがとうございます。そもそもパラボリックフライトは、どのような目的で行われていた活動なのでしょうか?

研究と教育の二つの目的で実施されている活動です。研究としては人間の時空間認知が、重力の変わった場合において、どのように変化するのか?をテーマにしています。

−時空間認知とはどういったものなのですか?

人間が持つ時間と空間に対する感覚という方がわかりやすいかもしれません。

活動の中では地球上において、人間が目を瞑り測った10秒と、微小重力下において、測った10秒との間に有意な差は存在するのかなどを調べていました。

-とても興味深い実験ですね。率直な疑問ですが、その微小重力下ではどのような感覚になるのでしょうか?

土井先生は水中に浮いている感じに近いけれど、水の抵抗がないように感じると仰っていたんですが、自分もかなり似た感覚を抱きました。

その上で自分の感覚を加えて表現したいと思います。僕が物理を専攻していることもありまして、自分自身を物理法則に従う一つの物体として捉えることが多いんです。

ニュートンの法則で、力が加わらなければ物体は等速直線運動をするというものがあります。

それに当てはめて考えると、自分が微小重力下において浮いている状態であるなら、自分は等速直線運動をすると、頭の中では理解できているんですね。

でも、実際には脳がその状況を理解できずに水の中にいるような感覚で、足をバタバタさせてしまうといったような動きをしてしまいます。

言うならば、自分自身は調和に従って動いているはずにも関わらず、脳はそれを調和と認識せず、人知を超えたカオスのように認識するという感覚だと思います。

−今後、人間が重力の無い宇宙空間で生活する可能性を想定した時、その脳の認知は一つの障壁になるかもしれませんね。

宇宙飛行士ですら、まだ3年、4年などの長期間にわたって宇宙に滞在した人はいないですよね。それを考えると、その可能性も十分にありえます。

-将来、デジタルネイティブ(生まれながらにITに親しんでいる世代という意味)のように、スペースネイティブが生まれる可能性もありますね。

その場合、認知能力なども変わってくると思います。例えば影があるのか無いのかに対する認知があると考えられます。

基本的には光が上から降り注ぐので、モノを見て下に影がついていると認識します。それが無重力により、影の奥行きが変わることで影に対する認識が変わってくるかもしれません。

でも、パラボリックフライトを経験した後、自分に起きた変化としてあることがありまして。

-それはどんな変化なのでしょうか?

パラボリックフライトの後、自分が微小重力に適応しようとしているのかなと感じる瞬間があったんですよ。

椅子に座っているだけなのに突然身体が浮き上がるような感覚になったり、逆に押しつぶされるような感覚になったりというように。

また、ちょっとジャンプすればどこまでも飛んでいけそうな気がしたとかですね。

-ファンタジーの世界みたいですね(笑)

他の変化としては宇宙酔いと呼ばれる現象がありました。

-宇宙酔い?初めて聞く言葉です。

宇宙酔いとは重力がないことによって、頭痛や吐き気を催すというものです。この現象は宇宙に行った人の約半数がかかると報告されています。

汚い話になりますが、私もフライト中に吐き気を催して吐いてしましいました。(笑)


>> 次頁「宇宙と自分。」

 

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