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社会人インタビュー

パズルと論理的思考力の不思議な関係を『ビラがパズルの人』に問う。

Writer|小林 亜湖
  • 読了目安時間:10分
  • 更新日:2019.5.29

人生ゲームをやる時は必ず『ハイリスクコース』。

-初めから教育者を目指すつもりだったのですか?

いいえ、そういったことは全くありませんでした。

もともと私は法学部として京都大学に入学しているのですが、途中で総合人間学部に転学しました。

理由はパズルの研究がしたくて。総合人間学部は多種多様な学問を幅広く見られるので、パズルを紐解くのに適した学部だと思って。

パズルの研究を始める上で、まず、社会とパズルとの関係性について考えました。パズルはなんの意味もなく存在しているわけではなく、社会の中で必要だから存在してるのではないか、と考えて研究を始めたんです。

そして知育玩具系のパズルにはキャラクターがついていたり、紙面のパズルが華やかに彩られていたりと、パズル本体からしたら無駄な要素がついていることが多いことに気がつきました。

しかし、一見無駄に思える、それらの装飾が創作物としての価値を高めているのではないか、と思い、パズルは芸術にも深く関係しているのではないかという推測をたてました。そこから芸術学の勉強も始めました。

パズルは作る人と、それを受け取る人との間で、なにか特別なモノがあるのかもしれない…そう考えて、それに基づいた論文もいくつか書きました。でも、研究を進めていくうちに、芸術とパズルの違いが見えてきたんです。

芸術の場合は、作者がある程度のメッセージ性を作品に込めていたとしても、受け取る人はその作品に対していろんな解釈をもてるんですよね。むしろ作者はある程度の広い解釈を受け取る側に持ってもらえるような作品をつくる、といった傾向もあります。

片やパズルは、作者の思考過程をなぞるように用意された「一通りの解」にたどり着くのが理想的とされています。芸術的観点から見ると、これはとんでもないことですよね。

これは教育システムの負の側面も伝えていて、出題者の意図を汲み、答えが一通りになるように教育しようとする意図がパズルには働いているのではないかと考えました。実際に解が一通りになるパズルがもてはやされていた時期もありました。

しかし、90年代頃から解が何通りもあるパズルが注目され始め、作者も考えつかなかったような答えが評価されるようにもなり、入社試験や入学試験で取り入れられたりもしていて…。

博士論文では、この現象について言及しています。

-未開拓の分野を研究することに対する不安などはなかったのですか?

もちろん不安はありました。大人しく法学部を卒業して就職すれば、安定した人生を送れるだろうなとは考えてました。でも、そんな時ふと考えたんですね。

私の実家には歴代の人生ゲームが全種そろっていました。とても好きなボードゲームだったんです。

人生ゲームってハイリスクコースとローリスクコースとに分かれてるんです。ハイリスクコースは失敗したらプー太郎だけど、成功したらハイリターンっていうコースで。ローリスクコースは反対に大きく失敗することはないけど、もちろん大きく成功することもない。

私は人生ゲームをやる時は必ず『ハイリスクコース』を選んでいたんです。

それを思い出して「なんでゲームではリスクを省みないで勝負していけるのに自分の一度きりの人生では挑戦しないんだろう」って思ったんです。だから、自分の人生、好きにやってみようって思いまして、転学を決めて、パズルを研究することにしたんです。

そして今年はついに教室もオープンしたので、パズルを通して様々な年齢の方に考える力の基礎をつけて頂いたり、楽しんで頂けることを目指し、さらに躍進していきたいと考えています。

-本日はお時間いただきありがとうございました。パズルに関する貴重なお話が聞けて大変勉強になりました。パズルの未来には、これからも期待して行きたいと思います!

 

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京都大学経済学部2年生。末松ゼミ所属。ベルギー/インドからの帰国子女という異色なバックグラウンドを存分に生かした記事を書いていきたいと思います。宜しくお願いします。

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