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社会人インタビュー

京大卒 -だからこそお笑い芸人になった。”ボケ”から見える意外な真理。

Writer|塩田 かりん
  • 読了目安時間:8分
  • 更新日:2019.6.28

“人を傷つけないお笑い”であるべき?

-ところで、小保内さんは、ツイッターで貧困問題や男女差別についてなど、わりと真面目な話題に触れていることがあるように思うのですが、あれは何か(ブランディング的な)意図があってやられていたりするんですか?

僕、芸人のわりにツイッター”堅い”って言われるんですけど、実はやっていることはお笑いと一緒なんですよね。

何かニュースが出るとみんなが一斉に反応する。すると、なぜかみんなが見落としていることがあったりする。それに対して僕はこういう見方もあるよ?と提示する。みんなが恣意的に選択している現実に、僕はオルタナティブな意見を提示する。これって僕のお笑い観と全く一緒なんです。

つまり、僕が社会問題についてこういう見方もあるんじゃない?って言っているときと、「ケンタウロスは足が6本だから昆虫」って言うときで、全く同じ脳の使い方をしているというか。

-小保内さんは”ずっとボケている”んでしょうね、どこかで。

たぶん実際そうなんですよ(笑)。全部おもしろいと思って言っている節はあるし、全部現実に新しい見方がないかなと思って言っている節はあるし。

どんなに重たいテーマでも、どんなにしょうもないテーマでも、僕はずっとボケていきたいです。何でもちょっとずらして見ることで、むしろ真実が見えてくる、というのは絶対ありうることなので。一生ボケ続けるぞ、と思っています。

-男女コンビとして活動する上で難しいなと感じるところなどはありますか?

一つは相方に「女性である必然性」が求められてしまうことですね。芸人って男女比が9:1とかなので、女性が出てくると「あ、女芸人だ!」ってなるんですよ。男性が出てきても「あ、男芸人だ!」とはならないのに。それで、女性らしい発言を過剰に求められてしまったりします。

あるいはネタの中でも、たとえば相方に車掌さんの役とかはやらせにくいんですよ。お客さんから見ると、「女性で車掌さんって珍しいよね」というノイズが入っちゃうので。そういう意味での制約はありますね。

また「2人は付き合ってるの?」などと聞かれることも多いです。大学の先輩・後輩で、雰囲気的にもカップルに見えなくもないからそう言われるのでしょうが、実際には全く。仲は良いんですけどね。感覚的には兄妹……いや、そんなに近くないな。いとこ、くらいですかね。「男女を見たらカップルと思え」みたいな人たちが世の中に多すぎて辟易します。人間関係ってもう少し豊かだろうに。

-お笑いは、どこか”誰かをバカにする”ところも避けられないと思うのですが、そこに関してはどうお考えですか?

うーん……。避けられないのかしら。きちんと事前に勉強をして、取材をして、十分に考えて、素材を料理して。とにかく普段からアンテナを立てて丁寧に考えるプロセスを踏んでいれば、不用意に誰かを踏む確率はどんどん下がると思いますよ。とにかく考えること、準備をすることだと思います。

さりとて「これはグレーかも」とか「やるべきかやらぬべきか」など悩むラインの笑いも当然あるわけですが。それらについても、想像力が事前に及んでいて、責任や覚悟を持ってやるならば、僕は自由な表現の範疇だと思います。

傷つく人もいるかもしれない。表現の結果として批判にさらされるかもしれない。そこまで想像したうえで、やる意義があるからやる。これを押さえ付けることは弾圧ですからね。ロクな考えも無しに何かして炎上するのは馬鹿らしいですけどね。

-最近は傷つけることを恐れて、その問題自体に触れないことも増えてきていますよね。

それこそ考えることの放棄でしかないというか。差別的な対象になるものから遠ざかる、というのは健全な態度ではないと思います。そういう問題って話題にするのがダメなのではなくて、扱い方が悪いからダメなんですよ。

なんだろうな、「人を傷つけないお笑いであるべき」というようなスローガン、最近耳にするじゃないですか。それはそうなんですよ。正しいんですよ。でもそれが、結局毒にも薬にもならないものになってしまっては、文化としてのお笑いは死ぬと思うんです。人を傷つけないために「この話題はだめ」「これはタブー」などと、あらゆる話題から距離をとって、現実から遮断されたお笑いなんて面白いわけもないですし。

だから、お笑いがちゃんと現実と関わり合いながら、新しいものをどんどん生み出して、文化として拡大、進歩していくためには、センシティブな話題に対する関わり方を開発する必要があると思うんです。触れないんじゃない。見て見ぬ振りをするんじゃない。いかに自然に関わるべきか、なはずなんです。

-今後、小保内さんはどのようにお笑いに取り組んでいかれるのでしょうか?

今、お笑いを含むエンタメ全体が、変化のただ中、何らかの過渡期にありますよね。この時代に生きてエンタメに関わるって、凄く責任のあることだと思うんですよ。僕らの世代が何を笑うかによって、100年後の人たちが何を笑うかが決まる。そういう大きな流れの中で、自分の旗を振り回していられたらなと思っています。

-大変勉強になりました。小保内さんの今後のご活躍を期待しております。本日はどうも有難うございました。

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京都大学法学部2回生。高2の夏からオランダに留学し、さまざまな国籍の人々と2年間寮生活を経験した。オランダ語は一言も話せない。

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