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社会人インタビュー

科学の限界への挑戦。若宮教授の描く、『持続可能な未来』とは。(後編)

Writer|古河秀鴻 Writer|古河秀鴻
  • 読了目安時間:7分
  • 更新日:2018/4/18

若宮淳志、京都大学化学研究所、教授。前編では基礎研究と経営について、産官学連携のあり方などついてお話頂きました。後編では、革新的なフィルム型太陽電池から、農地の利用、学生へのメッセージに至るまで、若宮教授の抱く熱い思いに迫りました。

僅か“500 nm(ナノメートル)”の太陽電池が普及する未来へ。

(手に持っている物が、フィルム型の太陽電池です。)

-近年、太陽電池は勢いを増して、設置が進んでいますね。普及が進むことで、さらに設置コストは逓減していくんでしょうか。

フィードインタリフ制度によって、2012年頃から、ものすごい勢いで太陽電池が普及しました。電車からでも、太陽電池設置の家がたくさん見られますよね。
※フィードインタリフ制度(固定価格買い取り制度)とは、自然エネルギーから作られた電力の買取価格を、法律で定める方式の助成制度のこと。

車窓から眺める太陽電池の材質は、ほとんどがシリコンです。シリコンはとても発電効率が良く、高効率化だけでなく、長寿命化、低コスト化が順調に進んでいる材質です。

しかし現状の太陽電池の生産過程は、原料のシリコンを溶かしたものを固めてインゴット(金属塊)にし、スライスをしており、この工程を変更して生産コストをさらにさらに下げることは厳しい状況にあります。

従って、現在主流となっている、シリコン製太陽電池の提供価格をこれ以上安くするということは限界があると言えます。

一方、私が作っているフィルム型の太陽電池は、「紙の印刷と同じ工程」で製作できるため、コストを大幅に削減でき、今よりも格段に安く提供できると考えています。

-なるほど。フィルム型太陽電池が普及して、我々の日常生活の端々に見られるようになると、エネルギー問題は解消されていくのかもしれませんね。

面白い話があって、地球上の全ての砂漠を太陽電池で覆えば、地球上で使っているエネルギーを完全に補えるんですよ。それぐらいの太陽光エネルギーが日々注いでいます。

今の太陽電池の製造工程では、砂漠を覆うほどの太陽電池を全部作るのには、現在の技術で600年かかるとも言われています。

これに対して、僕が研究しているフィルム型の太陽電池は、製造過程に強みがあると考えています。フィルム型は紙と同様に印刷して作ることができますからね。

例えばニューヨークタイムズなのですが、1日にどれほどの面積の紙を刷っていると思いますか。相当な面積になるのですが。

そうやって考えると、近い将来、現実的に地球上で使われる全てのエネルギーをまかなえるようになるのではないかと。だから印刷して作りたいんですよね。

-印刷のように作ると、具体的にはどれくらいの薄さに出来るのでしょうか。

これは下敷きよりも薄いくらいで、実際に使っている材料の膜厚は500 nm(ナノメートル)ほどですね。薄くて柔らかいフィルムなので曲がりますし、自宅の駐車場の屋根や、車の上に貼れるんです。

車の上に太陽電池を乗せて、動力エネルギーにすることは何回も考えられてきましたが、車にとって、上に重いものを載せることは致命的です。

そこで、軽くて変換効率の良いものとして、今回のフィルム型の太陽電池は注目されていますね。車の側面部にも今回のフィルムを貼る案はありますが、色やデザインの面の課題を解決していかなければなりません。


>> 次頁「農地を活用した地方発の発電体制を推進する商品を。」

 

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