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社会人インタビュー

集え、本気で起業したい学生たち! “起業部”顧問が描く学生発ベンチャーと日本産業の未来。

Writer|古渡 彩乃
  • 読了目安時間:13分
  • 更新日:2019.10.31

熊野正樹、九州大学(学術研究・産学官連携本部ベンチャー創出推進グループ)准教授。九州大学を始め複数の拠点で「起業部」の顧問を務め、学生を中心に実践的な起業家教育を行う。日々奔走する彼が考える日本でのスタートアップの現状や課題、「学生起業」の意義とは。

「サッカー部がサッカーをするがごとく、起業部は学生起業します」——miyako/九大“起業部”とは?

-今日はお忙しい中お時間を作っていただきありがとうございます。さっそくですが、今年から京都で始まったmiyako起業部について教えてください。

京都リサーチパーク株式会社(以下、KRP)が、京都発のスタートアップ創出に向けたプログラムとして創設した、起業したい人のための活動です。この前、結成式をして、今日が1回目の活動だったんですけどね。部員は基本的に学生で、京大、同志社、立命館……工芸繊維大学とか、そのあたりの学生が60名くらいいます。社会人も何人かいますけど、基本は京都の学生を集めてやってますね。男女比が95%男なので、女性にももっと参加して欲しいなと思っています。活動の頻度は月2回で、僕は早起きして九州から毎回、土曜日の13:00~17:00に京都に来ています。

-先生の今の拠点は九州大学とお伺いしましたが、京都でも起業部を始めたきっかけを教えてください。

僕は富山出身なんですけど、同志社大学に入ったので、そこから10年くらいは京都にいたんです。で、そのあと金融機関を経たりして九大で教員をしながら起業部をやっているんですが、そちらが最近注目されているんですね。いろんな大学の関係者の方が話を聞きたいということで来られます。今回KRPにもこういうことをやりたいとご依頼されて。だいたいはお断りしているんですけど、僕は京都にお世話になりましたし、思い入れもあるので引き受けることになりました。

-九大起業部とmiyako起業部は、内容的には違うんですか?

基本的には同じです。まず九大起業部の説明をざっくりしましょうか。九大起業部は2年前の2017年6月に「学生発ベンチャーを出していくことを目指す」ということで作った部活動(課外活動)で、120人くらい在籍しています。で、これはサッカー部、野球部、陸上部なんかと同じように、部活動として活動しています。要するに、サッカー部がサッカーするように、野球部が野球をするように、起業部は起業をしますということです。それも卒業後ではなくて、学生時代に起業をしましょうという、そういう部活動なんですね。だから、当たり前なんですけど入部条件はちょっと厳しくて、「起業の意思がある九大生」に限定しています。

例えば、4年生でもう就職先が決まっていたり、あるいは今3年生で就活始めていたりして、起業するつもりがない人には、申し訳ないですが入部を許可しないということです。実際そういった、「起業するつもりはないけれど、この活動をすると自分が成長できそうだから入部してもいいですか?」という学生が100人以上いましたが、全てお断りしました。

“結果的に就職していく”のは別にいいんですが、入る段階では起業するっていう意思がないとだめだと。これはものすごく大事にしています。逆に、例えば自分が野球部で監督しているとして、「野球はしたくないんですけど、健康にいいから野球部入っていいですか?」っていう人が来たら断ると思うんですよ。それと同じ理屈で起業したい学生だけを集めたっていうのが大きな特徴ですね。

-具体的な活動内容についてお伺いしてもいいですか?

ビジネスプランをチームで作って、国内外のコンテストに応募しながら、ブラッシュアップして起業していきます。僕が顧問として指導していますが、他にも起業家の方やベンチャーキャピタリスト、弁護士・会計士の方など50人にもメンターになってもらって指導しています。「10年で50社学生ベンチャーを出して、うち5社上場企業出す」ということを目標に日々活動しています。

活動は4月に新入生募集して、5月から7月は起業って何だとか、投資と融資の違いは何だとか、基本的なことを学びながらチームを作って、ビジネスプランを作っていきます。秋以降は毎週のようにビジコンがあるので、それに片っ端から応募して、1月から3月までで起業していく、というのがだいたいの流れです。ビジコンではまあまあ活躍していて、去年だけで4チームが全国優勝しているんですよ。

九大起業部のおおまかな説明はこんな感じでしょうか。miyako起業部もこれに準じてやります。

-九大起業部のパンフレットを拝見すると、ビジネスプランの内容がけっこう幅広いですね。これはやっぱり学生がやりたいことから派生したものなんですか?

基本的に学生が好きなことをやっていますが、一応、大学の技術を使ったテーマで考えるということは推奨していますね。あとは、「短期間で商用化できるもの」を優先的に取り扱うようにしています。学生も卒業しちゃうので、実用化するのに30年とか長い時間がかかってしまうものは、起業部で取り扱ってもあまり意味がないんです。京大ほどじゃないですけど、九大にも2000人の研究者がいるので、蓄積された知見や技術はそれ相応にあるんですよね。

miyako起業部の方は、今日1回目なのでどうなるかまだ分からないですが、いろんな可能性を探りながらやっていきたいですね。京都の学生が多いので、それこそ京大生だったら京大の技術を使ってもらってもいいですし、KRPは産学官連携(新技術の研究開発や新事業の創出のため、大学などの教育・研究機関、民間企業、政府・地方公共団体が連携すること)をしっかりしているので、企業の技術を使ってもいいでしょうし。京都らしさみたいなものを取り入れるというのも一案ですね。

-なるほど。miyako起業部は今後どういうふうに活動していく予定ですか? 「1年で絶対に起業」みたいな目標はありますか?

それは来るメンバーによるんですよね。もうビジネスプランを持っている人もいるし、まったくゼロだけど起業をしたいとか、スタートアップに興味があるっていう人もいるので。メンツを見て、どのくらい構想ができてるかを見ながら進めていくことになると思います。ただ、早ければ1年くらいで起業するところも出てくると思います。京都は学生の街ですし、元々任天堂や村田製作所などが始まったベンチャーの都ですから、大きな成果が出るものと期待しています。


>> 次頁「「学生起業家」が、日本の産業界の課題を解決する?」

 

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