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社会人インタビュー

科学の限界への挑戦。若宮教授の描く、『持続可能な未来』とは。(前編)

Writer|古河 秀鴻 Writer|古河 秀鴻
  • 読了目安時間:8分
  • 更新日:2018.4.3

若宮淳志、京都大学化学研究所、教授。革新的有機太陽電池の開発により、再生可能エネルギーの飛躍的進歩に大きく寄与し、現在は産官学連携のプロジェクトを先導。基礎研究を商用レベルまでに昇華させ、持続可能な人類の未来を創るべく科学の限界に挑戦する。その想いに迫る。

規制リスクの壁を超えるため、自ら会社を興そうと考えた。

-本日はお忙しい中、お時間を割いて頂き本当に有難うございます。早速インタビューに入らせて頂きますが、近年、特に注目されております再生可能エネルギー含む、若宮教授のご研究についてお伺い出来ますでしょうか。

ありがたいことに注目して頂いてます。私の研究は「塗って作ることができる、フィルム型の太陽電池」というものですね。

これはCOIという科学技術振興機構のプロジェクトにサポートしてもらい、産学官含めた大きな国家プロジェクトという形で進んでいます。
(COI=センターオブイノベーション

-先生のご研究について調べる過程で、大学でベンチャーを持たれていることが分かりました。こういった動きは珍しいのでしょうか。

海外ではハーバードとかが沢山ベンチャー企業を持っていて、珍しいことではないですね。最近になって、日本でも、資材や知識の集まる大学で、「民間企業のように利益を出して運営していこう」という話になってきました。

そういった流れもあって、2018年の1月11日にベンチャーを持つことになりました。

だから、皆さんが来てくれるタイミングがよくて、調べてきたのかなと思うぐらいタイムリーだったんですよ。プレスリリース第一号ですね。

-偶然とは言えいいタイミングで来られ嬉しく思います。ところで、大学発ベンチャーというのはまだあまり耳にしませんが、昨今の『産官学の連携』をどう見られていますか。

大学の研究者、特に京大の研究者っていうのは、研究に没頭したいという人が多い傾向にあると思います。だから、企業を興すために、論文を書いて、特許を取って、とは思わないんでしょうね。

-ではなぜ若宮先生は企業を持たれるに至ったのでしょうか。

一つに、産学連携の担当者の方やCOIのプロジェクト担当者の方が、僕が取り組んでいる研究を社会に実装させたいと言ってきてくださいまして、『需要と供給がマッチした』というのがありますね。

もう一つ大きいのが、僕の研究である太陽電池では、鉛を使うんですよ。効率が物凄く良くて、印刷出来るし、曲がるし。

でも世界的に特に鉛は風当たりが厳しく、ヨーロッパのRoHS(ローズ)規制というもので鉛を使うことを規制されてるんですよ。今まではそれがネックで、材料を作るのは出来たんですが、太陽電池までは作れなかった。

実は材料はいくつか特許を僕が持っていて、生産も行われてるんです。世界的にもとんでもないぐらい売れてるんですよ笑。ただどこの企業も、鉛を使うって話になると規制のせいで動けなかった。

材料までは作れても、この技術を世に出せないって悔しいですよね。だから、それならもう自分で会社を作ろう!ってことで始めたんですよ。


>> 次頁「利潤追求だけでは“長期的な基礎研究の成長は見込めない”。」

 

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