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海外大学院進学という選択肢、異色なキャリアを歩む物理学者の価値観とは。

Writer|美馬 翔希
  • 読了目安時間:8分
  • 更新日:2018.10.17

中田勝(なかたすぐる)、ドイツのマックスプランク固体物理学研究所博士課程在籍。京都大学理学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。異質な経歴を歩む研究者のキャリアと価値観に迫る。

取り組む難問の正体と博士進学を考えるまで。

-本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。早速ですが、まず中田さんの研究内容について簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか。

超伝導という現象に対し、実験的な立場から研究しています。

超伝導とは、100年以上前に発見された現象で、ある種の金属や合金を超低温にすると電気抵抗がなくなる現象のことです。

発見当初は-270度程度でしか観測されなかった現象ですが、現在は-140度に迫る”高温”でも観測されるようになり、より高温での超伝導を可能にする物質についても研究が進んでいます。

超伝導研究には多様なアプローチがある中で、なぜそういう現象が起こるのかということに興味を持って研究しています。

-その超伝導という研究領域は我々の実生活にはどのような形で関わる領域なのでしょうか?

研究の実用的な面については、送電線を考えてもらえるとわかりやすいかと思います。現在は発電所で生産された電気は送電線を伝う中で、抵抗により熱として放出されてしまいますが、超伝導を利用して送電することができれば、抵抗がないため電気のロスなく送電することが可能ですよね。

そのような方面で応用が期待されている研究でもあるんです。
ぼくは超伝導の応用に直接携わっているわけではないのですが、身近なところだとリニアやMRIなど強い磁場を発生させるようなマシンには標準的に利用されている技術です。

-なるほど、最初は難しい印象を受けますが、そう聞くとワクワクする研究領域ですね!現在は博士過程に在籍しているということですが、もともと博士に進学する予定だったのでしょうか?

いえ、最初は博士課程に進むつもりは毛頭なく、業界を広く見ながらM1の12月くらいまでは普通に就職活動をしていました(笑)

-就職活動をされていたんですね!

はい。というのも、ぼくが修士課程を過ごした東京大学では、5年間の大学院生支援プログラムがあり魅力的に感じていたのですが、いざ説明を聞いてみるとその実態が自分の想像していたものとは異なっていたため、プログラムに応募することはせず博士課程には進学しないつもりでした。

また、自分の研究室の教授が、ぼくが博士1年の終わりに退官される予定だったので、少なくとも東京大学で博士を取ることはないだろうなと思い、就職活動をしていました。


>> 次頁「実利と夢を最大化させる海外研究所への博士進学」

 

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