いつか世界で活躍する「誰か」にSpotlightを。

spotlight

自分を見せ、自分を知る。伊藤三時の模索する「自己表現」という生き方。

Writer|中村 達樹
  • 読了目安時間:9分
  • 更新日:2020.3.24

伊藤三時(いとう さんじ)。東京工芸大学4年生。双極性障害と広汎性発達障害を抱えつつ、サバゲーアイドルユニット『F.PRiNCESS』をはじめ、同人小説家・被写体・舞台女優・怪談師など多種多様な形で表現活動に携わる。精力的に活動する彼女の生のあり方と創作論、「障害」論に迫る。

大学という「枠」を越えて、多様な世界へ

-本日はお忙しい中ありがとうございます。まず非常に多様な活動をされていることに驚きを隠せないのですが、それぞれの活動を始めたきっかけについて教えて頂けますか。

はい、ほとんどの活動は大学に入ってから始めましたね。その大学生活ももう3回目の4年生を迎えようとしていますが。

役者を始めたのは大学の演劇部に入っていたことがきっかけですし、小説は大学1年生の時に行った同人イベントで見かけた作家の方に憧れて書き始めました。

-では最初に小説についてお聞きしたいと思います。小説を書こうとする方の多くは新人賞や小説投稿サイトなどから始められると思うのですが、あえて同人小説を書かれる理由はどの部分にあるのでしょうか。

私も最初は小説投稿サイトの「小説家になろう」に投稿していましたが、飽きちゃいましたね。

そのような環境で多くの方に読んで頂くためには、どうしても出版社やサイト全体の作品の傾向に合わせる必要が出てくる。結果として自分の書きたいものを書けないと感じました。

そういった傾向に縛られずに、全部自分でデザインできて、自分の納得が行く作品をカタチとして残せるのが同人誌の良さだと思います。通りがかっただけの方にもその場で読んで頂けて、時に編集者の方の目に留まっていきなり商業誌化されることがあるのも魅力的です。

-小説執筆と他の活動を兼ねることで、よい影響を受けることもあるのでしょうか。

それは多分にあります。特に演劇で演じた人物の気持ちを小説に反映したり、小説で書いていたキャラクターに一致していたことで役に入り込めたりすることは多いですね。悪い影響が出ることもありますが、そうならないよう自分で上手く役やキャラクターを解釈し、消化するようにしています。

私は器用な方ではないので、そういった他の活動も含めた日常生活全般を使って役作りをするのが一番手っ取り早く、効率も良いと感じています。

-演劇のお話が出たので、そちらについてもお聞きしたいと思います。まず大学の演劇部の枠を越えて、小演劇の世界へたどり着いた過程について教えて頂けますか。

初めは自分からオーディションに飛び込んで行きました。ただ一度オーディションを受ければ、受かっても受からなくても劇団の主宰の方と人脈ができますし、受かれば共演者の方とも繋がれます。そういった方々からオファーを受けて役を頂いたりもしながら、次第にこの世界に入っていったという感じです。

-大学の枠を越えるのは大変なようにも感じられますが、あっさり越えられてしまったのですね。

大学の枠は、出ていこうとさえ思えば案外簡単に出ていけると思います。今の世代でしたらネットも使えますし、実際この取材の場も大学の枠を超えて成立しているわけですし。私の活動は、基本的にそういった枠の外へ出ていくことから始まっていますね。

-そのような外向的な性格は生まれつきなのでしょうか。

そういうわけでもないです。高校生の頃は高校が世界の全てであるように感じていて、そのことに特に違和感もありませんでした。

コミックマーケットなどの同人イベントにはその頃から通っていましたが、そもそも企業以外に個人も出展できることを知りませんでしたし、仮に知っていたとしてもお金がなくて参加できなかったでしょうね。

大学生になって時間的にも金銭的にも自由ができ、知見が広がったことで自然と外向的になっていったのだと思います。「あ、こういう世界もあるんだ。行こ!」みたいな感じで。

-他に三時さんはサバゲーアイドルの活動もされていますが、サバゲーの世界に入ったきっかけを教えて下さい。

はい、これも大学1年生の頃だったのですが、学内の食堂で軍装をされている方を見つけたのがきっかけです。余りの興味から、Twitterを駆使してその方を特定し、DMまで送ってしまいました。

その結果サバゲー同好会に誘われて、しばらくはお金もなくて活動していなかったのですが、3年生の時にサバゲーアイドルの存在を知り、オーディションに行ったら受かってしまいました。

正直に言えば、私がアイドルを始めたきっかけは「自分の知名度が上がって同人誌が売れればいい」程度のもので、今もそこまでアイドルとしての自覚は無いですね(笑)

もっともこの世界に入ってから、私をアイドルとして愛してくださる方や、銃の魅力に気づかせてくれた方との出会いもあったので、やってよかったと思います。


>> 次頁「他人の評価のためでいい、とにかく何かを完成させる」

 

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