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海外大学院進学という選択肢、異色なキャリアを歩む物理学者の価値観とは。

Writer|美馬 翔希
  • 読了目安時間:8分
  • 更新日:2018.10.17

実利と夢を最大化させる海外研究所への博士進学

-そこから博士課程、もっというと海外の博士課程に進むことになったのはどういう経緯からなんでしょうか?

きっかけはかなりの偶然で、M1の秋頃に東大の研究室OBの方から教授の退官後の進路をどうするのか、興味があればドイツのうちの研究室に応募してみないか、と提案をいただいたんですよ。

その翌月、東京で開かれた国際会議でその先輩が居られる研究室のボスの講演があり、講演後に声をかけて、博士課程進学に興味があると伝えると、翌1月にドイツでセミナーと面接を行って、、、という感じで合格をもらい、その場でドイツへの進学を決めて帰国しました(笑)

-え!その場で決断したんですか!

そうですね(笑)
想像以上にトントン拍子で進み、こんなチャンス二度とないだろうと直感的に感じました。

あと、ぼくの実家は普通のサラリーマン家庭だったこともあり、お給金を頂かずに研究をするという発想がなく、研究をやめて就職という選択肢を考えていましたが、本当は研究がしたかったんだと思います。

-なるほど、金銭報酬の面で悩んではいたものの、ずっと心の底には研究へのモチベーションがあったと。経済的な部分でいうと、日本よりやはりお給料は高いんでしょうか?

日本の一部の博士過程の学生がもらっている学振と比較して倍も待遇が良いということはないと思いますが、物価の影響もあってか、支出も考慮した正味の収入は日本より良いのではないかと思います。このように日本に帰国するお金も貯めながら、日々普通に生活できていますしね。

決断に際して、経済的な部分と上述した自分がやりたかった研究ができるというやりがいの部分の両方が最大化できる選択肢だと思ったので、即断できましたね。

-なるほど、確かにそう聞くと、中田さんにとっては最良の選択肢だったのかもしれないですね。もともと海外の大学院には興味があったんですか?

そうですね、興味はありました。

少し時系列が前後するんですが、海外大学院に興味を持ったのはM1の夏に帰省中に、ネットであるメディアを読んだことがきっかけなんですよ。以来、就活こそしていましたが、頭の片隅には常に選択肢として自分の中にあったと思います。

-この記事もそういう学生に選択肢を与えられる記事にしたいですね(笑)海外渡航に際して言語などで大変なことはなかったですか?

ぼくの場合はかなり特殊なケースかもしれません。というのも、M1の冬に面接を受けたんですが、ボスがぼくのことをM2だと勘違いしていたらしく、合格してから実際に進学するまでに1年以上の猶予があったんですよ(笑)
そのおかげで時間に余裕があり、留学生とランチを食べたり、英語でのセミナーで積極的に質問するなど英会話に関しても準備ができました。

-その勘違いがあっても合格するのがすごい、、、その後現在は海外で研究を続けられていますが、研究環境に関して日本と比較して異なる点はありますか?

金銭面と研究室間の交流という点で異なるように感じますね。

1つ、研究予算に関しては、マックスプランク研究所の予算と東京大学の予算が同額程度と聞いたこともあり、マックスプランクが学部教育をしていないことを考慮すると比較的研究に使えるお金があることになるのかな、と。

肌感覚の話をすると、マックスプランクで研究をしている中で、お金がなくて困ったというような話を一度も聞いたことがないですね。

2つ目は研究室間の交流が活発だと思いますね。日本では同じ研究領域にもかかわらず、隣の研究室で何をしているのかわからない、ということも往往にしてある印象でしたが、マックスプランクではそういったことは少ないように思います。

ぼくが研究している物性物理学の分野では、試料を合成する研究室とぼくのように試料を測定する研究室が分業していることも多いのですが、「こういう面白い物質作ったんだけど、測ってみてよ?」というような研究室間交流もありますね。

-それは確かに日本ではあまり見られない光景かもしれないですね。何故そのようなことが実現できているんでしょうか?

知財や研究室間の競争の問題に関しては、教授たちがかなりうまくやってくれているという印象を受けますね。教授がきっかけを作って、その文化が研究室の末端にまで行き渡っている感じがします。

自分の研究分野にのめり込むほど、周辺の研究分野ひいては学問の全体像が見えなくなることはよくあるので、いい文化だと捉えていますよ。


>> 次頁「理系学生よ、人生は実験だ!「余白」と「人付き合い」を楽しめ」

 

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