社会人インタビュー
京大、篠原教授に訊く「マイクロウェーブとベンチャー、時々若者の未来」2/3
Writer|妹尾 脩平 |
- 読了目安時間:10分
- 更新日:2017.10.18
キラーアプリになり得るのは、充電パッド!?
-キラーアプリに成りうると頭に浮かんだものに、EV(電気自動車)や、IoTセンサーへの活用といったものがあるのですが、その点はどうお考えですか?
EVへのワイヤレス給電に関しては「距離が無いタイプ」のワイヤレス給電は既に日本でも認可されています。総務省が省令改正をしてくれました。ただ、日本では認可されていても国際規格にはなっていなかったので、今年の6月に「電波の国連」と言われるITUという機関にも総務省が掛け合い、結果として国際的にEVへのワイヤレス給電を普及させていこうという風になりました。
また、スマートフォンなどへのワイヤレス給電規格に「qi規格」というものがあります。これも距離を取らないタイプのワイヤレス給電規格です。簡単に言うと「置くだけ充電」ですね。一時期はほぼ全てのアンドロイドのスマートフォンがqi規格を搭載していました。海外ではある程度普及しているのですが、日本では中々普及していません。
「日本のワイヤレス給電は廃れた、育たない」というアナリストもいます。しかし、スマホ向けの「置くだけ充電」が流行しない理由として私が考えている原因は、「日本人はスマホを手放さないから」ではないかと思っています。
ワイヤレスとはいえ、スマホを充電パッド置いてしまうとスマホを操作できません。私の息子を見ていても思うのですが、日本人って充電中だろうが何だろうが常にスマホを手に持って操作していますよね。(笑) パッドに置いちゃうとそれができなくなってしまうんです。
これと話を繋げると、コンソーシアムをやりたい人たちの最終目的は、世界中にワイヤレス給電パッドを普及させて、バッテリーやコードを持ち歩かなくても良い世界を実現することなんですよ。ただ、現時点ではまだそれほどパッドが普及していないので、ワイヤレス給電をしようと思ったら、結局パッドを持ち歩く必要があるのが課題です。
けれどもqi規格は徐々に広まっていて、qi規格を搭載した机も発売されていますし、空港のラウンジでデフォルトの装備になっていたりするのも目にします。今は、充電設備が普及して「デフォルトインフラ」になるのが先か、それとも先にビジネス主体の体力が尽きるのが先か、といった状態です。
qi規格に関しては、まだ噂ではありますがAppleがiphone8に搭載するようなので、今後はより一層ワイヤレス給電が広まるでしょう。日本ではappleが始めたことは一気に流行りますから。
置くだけ充電ではなく、電波で遠隔的に充電する規格を載せるのではという噂もあったのですが、流石に採用はされなかったようです。ただ、iphone8には載らなくても、今後ihone9や10に載る可能性は十分に存在しています。置かなくても勝手に充電されている方が便利ですしね。もしそうなった場合、ワイヤレス給電は「キラーアプリ」になると予測できます。
-ワイヤレス給電設備がデフォルトインフラになるために必要なことって何だとお考えですか?EVの充電スタンドや、EV自体も日本では数が少ないですよね。
1つ考えられることとしては、飲食店の無料Wifiスポットのような「無料ワイヤレス給電スポット」が設置されていくことですね。人って無料だと使ってくれますから。
無料ワイヤレス給電スポットにガジェット好きの人が集まるようになり、そのガジェット好きの人たちが「無料スポットまで行くのは面倒だし、自分で給電デバイスを買って自由に使ってみよう」となってくれれば、どんどんインフラとしてワイヤレス給電が広まっていくでしょう。
EVが普及しない要因はいくつかあると思います。充電スポットが余りないということ、EV以外の代替の選択肢が多いこと、航続距離が短いことなどです。
日本人は「万が一」を考える民族なので、航続距離の短いEVは受け入れられないという議論もあります。9割型街乗りしかしないことは目に見えているのに、「もしかしたら旅行で遠出するかもしれない」と考えちゃうわけです。そうなると、航続距離がまだガソリン車より短いEVは選ばれませんよね。
>> 次頁「「手の届く範囲の宇宙空間」=Spaceに見出す、地球の未来。」
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