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社会人インタビュー

京大、篠原教授に訊く「マイクロウェーブとベンチャー、時々若者の未来」2/3

Writer|妹尾 脩平 Writer|妹尾 脩平
  • 読了目安時間:10分
  • 更新日:2017.10.18

「手の届く範囲の宇宙空間」=Spaceに見出す、地球の未来。

-篠原教授はワイヤレス給電以外にも、マイクロ波を活用した「宇宙発電(宇宙で太陽光発電を行い、創出した電力をマイクロ波によって地球に送信する)」の研究について取り組んでいらっしゃるそうですね。そちらの分野のご研究についてのお話についても伺わせて下さい。

分かりました。少し話が逸れますが、宇宙発電ってあんまり社会で知名度ないんですよね。(笑) 同じ宇宙の技術でも、宇宙エレベーターとかは皆さんご存知なのに。「絵面的」なインパクトが宇宙発電は弱いんですよ。ワイヤレスで電気を送るのが目に見えないので。現に、SFの世界でも宇宙発電が登場する作品は数える程しかありません。

話を戻しましょう。宇宙発電に至るまでのロジックとしては、地球はもう限界で資源も枯渇しそうだ、じゃあ宇宙に進出しようと。(笑) ここの飛躍で立ち止まる人も居ますが、少しついてきて下さいね。

英語には、universeとspaceという、「宇宙」を表す2つの単語があります。universeは、ブラックホールとか銀河といった広大な宇宙空間全体を指す単語です。一方spaceは、「手の届く範囲の宇宙空間」を示す単語です。宇宙発電は、このspaceへ進出しようという考えです。いくら地球が限界だからといって、いきなり人類が火星に移住したりするのは、さすがに飛びすぎていますから。

宇宙で太陽光発電を行うメリットとしては、天候や昼夜といった日照時間を考慮しなくても良いところです。宇宙空間においては、ほぼ四六時中、太陽からの光を浴び続けることができますので。

-素晴らしい技術ですね。そうなると気になるのは実用化がいつになりそうか、ということなのですが、そのメドを教えて頂きたいです。

この研究は、経産省やJAXAが中心となり進めているのですが、この3月にその経産省がロードマップを作成してくれました。2040〜50年くらいに実現できたらいいな、という感じです。1970年代くらいの時は、2030年に実現する予定だったんですけれども、もう2017年ですから。(笑)

実際に2040-50年に宇宙発電を実現しようとなると、もう今から全力で研究開発を行わなければなりません。リニアモーターカーだって、最近になって実用化段階の議論が盛んになっていますが、リニア研究が開始したのって実は50年くらい前のことなんです。

ワイヤレス給電などの、太陽発電の派生技術に関する研究は盛んになってきているのですが、今後は本筋の太陽発電にも尽力していかなければなりません。

-そうなんですね。それでは太陽発電が実現されるまでの「つなぎ」として、発電業界は何かしらシフトしていくとお考えですか。

私はそれ程大きな転換があるとは考えていません。エコに対する意識が高まり、クリーンエネルギーが注目を集めているのは事実です。でも、代替のクリーンエネルギーだけで電力を賄うのは難しいですよね。

太陽光発電を例に挙げると、あれって確かに環境負荷がゼロなのは良いことなんです。でも、稼働率という点で考えると余り芳しくないんです。全地球上の太陽光電池の稼働率は十数%だ、という研究結果も出ています。

何故これほど稼働率が落ち込むかというと、天候、昼夜といった日照時間の問題などと直面してしまうからです。夜がある時点で、1日の約半分は発電できない時間が存在するわけじゃないですか。

太陽電池で補えない分の電力は、いくら環境負荷があったとしても火力発電のような旧来の発電で賄うしかないですよね。「停電」は許されないわけですから。

つまるところ、「停電」が許されないわけですから、不安定な自然エネルギーだけに発電の未来を託すのは非現実的で、いくら文句を言われようとも温暖化ガスを排出する火力発電等に依存せざるを得ないのです。

また、賛成するかどうかは置いておいて、「電気をできるだけ使うな」という考えも存在していますね。私の持論として、人間は成長欲求のある生き物であり、成長こそが人間の本質だと考えているので、それを抑制するのは無理があると思います。

-なるほど。篠原教授のお考えとしては、使用量を減らすのではなく、そもそもの使用できる量を増やすべきだということですね。

その通りです。停電は許されない、環境負荷をかけ続けることも許されない、その上地球の資源にも限界がある、でも成長の為にはエネルギーを創出しないといけないという状況下なので、環境負荷もなく、電力の安定供給が可能な宇宙発電へとシフトしていくのが理想だなと考えています。

こうやって宇宙発電の話をすると、「人間は科学技術を過信している」と懐疑的な視線を向けられることが時折あります。「人間は地球に生まれた『生物』なんだから、地球で生きるべきで、宇宙なんかに進出するべきではない」といったことを耳にすることもあります。

この意見に関して考えを述べると、人間は確かに生物なんですが、特殊な生物ですよね。よく人間を「裸のサル」と表現することがあります。だってそうですよね、人間くらいですよ、新生児として自然界に産み落とされた際に裸体で生きていけないのは。サルとか他の動物は裸で生きていけるじゃないですか。

そんな中で人間がどうやって生き延びているかというと、「知恵」を活用しているわけなんです。服を着たり、家を建てたりといった風に。で、その「知恵」って「科学」じゃないですか。ここで科学を否定しちゃうと、人間の本質そのものを否定してしまうワケです。人間と科学は不可分だ、というのが私のポリシーです。

 

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Writer|妹尾 脩平

妹尾 脩平、京都大学経済学部4年生。京大発インカレサークル「Key Element」の部長。
(妹尾 脩平の過去記事「「人の夢を叶える起業」へ。京大生が考える一社目の選び方」)

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