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海外大学院進学という選択肢、異色なキャリアを歩む物理学者の価値観とは。
Writer|美馬 翔希 |
- 読了目安時間:8分
- 更新日:2018.10.17
理系学生よ、人生は実験だ!「余白」と「人付き合い」を楽しめ
-なるほど、話は少し変わって将来設計についてお伺いしたいのですが、短期的にはどのようなキャリアを考えていますか?
今のところは研究者になりたいと考えています。プライベートなことも考えると、日本に戻ろうと考えていますが、どこで研究者をやっていくかということに関して、現在はわからないですね。
-もっと長期的に考えるとどうですか?
はっきりいうとまだ全然決めていないですね、、、
ただドイツでは博士課程やポスドクといったアカデミックでのキャリアを終えたあとでも自分の専門にとらわれず、メルセデス・ベンツやボッシュなど国内の大企業でプロジェクトマネージャーをやって高給取りになっている人もいると聞きます。
そういう人生設計はドイツに来なければわからなかったことですし、これからも自分の専門にとらわれずに人脈を構築しながら視野を広げていきたいなと思っています。
-いわゆるドクターに行ったら研究者!と言う固定観念はないんですね。
そうですね、むしろ研究者として生きていくのが日本に比べると非常に厳しい環境です。そのせいもあってか、研究をしていく中で得た書類作成スキルや論理的思考力などを含めて広く社会で評価される文化が浸透していると思います。
-日本では研究者はかなりビジネスから乖離した所にいる感覚ですが、それだけではない世界が海外には広がっているんですね・・・。これまで過去から将来設計までお話を伺ってきましたが、中田さんから読者の皆さん、特に理系学生の方へのメッセージはありますか?
網羅的に選択肢を検討すること、自分のやりたいことからトップダウンで考えることが大事だと思います。
検討するべき選択肢を見つけるには、人付き合いが非常に大切だと思います。物理の研究がしたいからって物理が好きな人達とばかりと付き合っていてもよくないです。
自分も例えば、学部とは関係のないバドミントンサークルの縁で存在を知り、参加したサマーチャレンジという物理の合宿のおかげで全国に知り合いができ、結果東京大学進学への興味も醸成されました。
ボスとの出会いもそうですね、国際会議で声をかけなければ今の自分はなかったわけですから。優秀そうな人に声をかけてみる勇気、内輪にこもらず知らない人と話す勇気を持つことはすごく大事だと思います。
-なるほど、確かに理系学生というと人付き合いが活発な人は少ないイメージですが、そういうソフトな部分が大事になってくると。トップダウンの思考に関しては、どうでしょうか?
理系の学生は非常にボトムアップな思考が上手な人が多いと思うんです。高校の理科や数学って確実に正しい(と思われる)事実を積み上げる作業じゃないですか、そういうところが1つの要因かなと考えています。
そして理学部だと、ボトムアップ的な思考のまま学部の勉強はこなせてしまう。ぼくもそうでした。しかし修士過程に進学し、いざ自分の研究を始めたとき、学部で習った物理の知識と最先端の研究との乖離にびっくりしました。
学部までのようにボトムアップで積み上げていくだけでなく、なぜそうなのかわからなくともトップダウンで知識をインストールしながら研究しなければいけないことに気づいたんですよね。そこでやっと自分が達成したい研究構想にアプローチする手法として、トップダウンの思考が身につき、ひいてはキャリア形成にも応用するようになったのではないかと思います。
ただこういった思考をひとりでするのは非常に難しいですし、先ほども言った多様な人付き合いが大事です。修士の人にコンタクトを取ってみる、講演会に足を運んでみる。なんでもいいですから、こういうことで他人からきっかけをもらうことも一つのやり方です。
-なるほど、なんだか不確実なものというか、理想とのブランクを拒否しないということが大事なんですね。先ほどのお話でもかなり将来設計に曖昧な部分を残してらっしゃったのが気になったのですが、それもブランクの1つとして捉えているんでしょうか?
言われてみればそうですね(笑)人脈を広げ選択肢を増やしながら、意思決定をギリギリまで引き延ばして、その時その時で最適化するにはどうしたらいいかを考えている節はあるかもしれないです。
むしろその余白というか遊びを楽しむくらいの気持ちがあればいいですね。まぁ何事も取り返しのつかないことなんてなくて、全てが試験的でいいと思うんです。
-なるほど、人生は実験なんですね!中田さん本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございました。これからのご活躍も心から楽しみにしております。
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Follow @bicyear元京都大学大学院。現在は内定先の内定者組織代表、KE運営、長期インターンに鋭意取り組んでいる。自慢は「人生で一度も枝豆を自発的に頼んだことがないこと」。好きな食べ物は枝豆。
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