spotlight
目指すは若者への伝統文化の浸透。学生団体「京都着物企画」の熱意の根源を解き明かす。
Writer|海田 麻友子 |
- 読了目安時間:9分
- 更新日:2019.2.15
既存のものを問い直すことで、産まれた新しいコンテンツ。
‐イベントの具体的なお話をお伺いしたいのですが、尾持さんは着物企画では着付け塾というイベントの責任者を担当されていたんですよね?
尾持 はい。着付け塾は、夏は浴衣、秋は着物を参加者の方にお貸しして着方を教えて、自分で着た浴衣や着物で清水寺などの観光地を散策してもらうイベントです。
着物を用いたイベントは着物ファッションショーなど他にもやっていますが、他のイベントと違うのは、“実際に着ること”、つまり体験ができるかどうかです。着ること独特の高揚感もありますし、肌で触れると分かることもあります。
角帯(男性用の帯)を触ったら、こんなに硬いんだとかこんな質感なんだとかわかるんです。こういう風に直接、魅力を肌で感じられることが着付け塾の特徴です。
‐なるほど。着付けと散策以外のコンテンツは何かありますか?
尾持 夏は着物の用語を用いた、かるたを用意しました。かるたを通じて浴衣、着物についての知識をつけてもらおうと思って。
川相 秋は謎解きゲームをやりました。解きながら着物についての知識をつけてもらうことと、参加者の方には南禅寺の周辺で散策をしてもらったんですが、散策を楽しめることを目的としてました。
‐これらのコンテンツは毎年やってらっしゃるんでしょうか。
尾持 いえ、このコンテンツは今年新しく始めました。去年は着付けと浴衣や着物を着た際のマナーを教えること、それに散策をやっていました。
新しいことをしたかったというわけではなかったんですけど、問題意識をはっきりさせたら、こういうコンテンツを増やすことになったんです。
着付け塾を運営するにあたって、まず何のために着付け塾をやるのかを問い直したんですね。なんでかっていうと着付け塾って、毎年やってるイベントなんですよね。なので、ただ例年と同じことをするのではなくて、なにか意味づけをしなきゃいけないなと。
そう考えた時に着付け塾の目的は、“伝統文化に触れる入り口になる”、“ちょっと楽しい体験をしてもらう”ことでした。じゃあ入り口になるために何をしたらいいか考えたら、謎解きのような楽しい経験をしてもらったり、かるたを通じて言葉を覚えてもらって、親しみを持ってもらうといったことを思いつきました。
ただ、マナー講座を今年はなくしたんですが、それはよくなかったなと思います。新しく意味付けをするだけじゃなくて、もともとのコンテンツが存在していたことの意味をもっと考えるべきだったなと思っています。
‐責任者として、今おっしゃったコンテンツを考えること以外にも、メンバーのマネジメントなどもされていたと思うんですが、難しいなと思うことはありましたか?
尾持 最初に7月の着付け塾の運営をした時は一回生は入ったばかりだったので、あんまり仕事を振っちゃうとやめるんじゃないかなとか思ったり、いろいろ考えることはありました。ただ、メンバー全員、仕事をお願いしたらびっくりするくらい積極的に動いてくれて。正直あまり困ることはなかったです。
もちろん、メンバーがモチベーションを維持できるように努力はしてました。単純なことですけど、自分が今何をやっているのかわからなかったらやる気がなくなってしまうので、そこを透明化するようにしていました。
たとえば、着付け塾でかるたを作ったとのお話をしましたが、かるたの絵札書いてってお願いするだけじゃなくて、かるたを完成させるためにはこういうプロセスがあって、そのうちのこの部分をお願いしていますとか、話してました。
それがモチベーションになるっていうことは経験から感じてたので、みんなのモチベーションのアップにつながることはできる限りやろうかなと。
‐自分が今やってることが分かることって、モチベーションにかかわりますもんね。
尾持 あとはメンバーがやりたいことをできるようにっていうことも気をつけていました。「こういうことをやって!」っていうんじゃなくて、「よろしく」ってある意味丸投げする。
川相 私は丸投げされた側で、最初は戸惑ってたんですけど、いま思うとそのほうがやりやすかったです。
‐すごく考えて運営をしてらっしゃるんですね。このイベントは京都着物企画のメンバー全員で運営をされたんですか?
尾持 いえ、着物企画は各自がどのイベントの運営に携わるか、自由に決められます。なので着付け塾は、夏は30人、秋は15人程度で運営していました。メンバー全体はいま一、二回生あわせて約50人います。二回生の代が“運営代”といって、運営の中心になっています。
>> 次頁「総勢50名を動かし続ける、モチベーションの秘密とは。」
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