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社会人インタビュー

パズルと論理的思考力の不思議な関係を『ビラがパズルの人』に問う。

Writer|小林 亜湖
  • 読了目安時間:10分
  • 更新日:2019.5.29

『自分の頭で考える』という勉強の本質を呼び覚ます。

-パズルは数学に近い印象があるのですが、受験勉強をする上で、パズルで得たノウハウが役に立ちましたか?

そうですね。高3の夏に受験勉強を始めて一番伸びたのが数学でした。偏差値でいうと数学は30近く伸びましたね。

実際、中学受験の本などを読むと、小学校3,4年まではパズルなどで脳を柔軟にして、5,6年で詰め込み暗記をすると伸びるってことが書かれていたりするのをよく見ます。このような話には諸説あるとは思うのですが、一説として、丸暗記のみに頼った受験勉強がよくない、というのはありますね。

その点、パズルって自分の知らないことが答えであっても、論理的に考えていけば答えにたどり着ける可能性があるんです。だからこそパズルをやることで、論理的思考力もそうですが、やり方がわからなくても自分の力で考えれば解ける、という成功体験を詰むことができるんですね。

高学年で、丸暗記では対応できない難しい問題に当たった際に、『自力で考えて解く経験をしている子』と『していない子で』差が出てしまうんでしょうね。

あとは、ちょうど小学校3,4年生の時期に論理的に物事を考える力が発達すると言われています。そして5,6年生になると今度は仮説をたてて検証する、という能力がついてくると言われています。

3,4年生の時にしっかり基礎となる論理的思考力を鍛えておくことで、5,6年生で存分に能力を伸ばすことができる。そういった意味でも、小学生のうちにパズルをしっかり解いていることが、勉強に与える影響は大きいのではないかと思います。

-パズルで、受験にも必要な論理的思考力を鍛えることができるんですね。

ちょっと話は変わるのですが、法科大学院試験も同じような考えで作られているのではないかと個人的には考えています。

法科大学院は、法学部から入る時は法律の知識がメインの試験です。しかし、法学部以外の人に対しては、高難易度の論理パズルが試験で出てくるんです。それはとても難しいもので、パズルをやっている人でもなかなかてこずるような問題でして。

おそらく、その難しい論理パズルが解けるほどの論理的思考力がないと、法科大学院の勉強についていけないと考えられているのではと思っています。

-考える力を養えるという点で、パズルは勉強との結びつきが非常に強いかもしれないですね。

現場の高校や中学の先生の話を聞くと、進学校であっても、中学入試、高校入試と丸暗記で乗り切ってしまっている子が多くいるそうで。

そういった子が、中学までは成績が良かったけど高校の勉強で躓き成績が落ちてしまう、または、小学校では好成績だったのに中学の修学範囲で行き詰まってしまう、ということはよくあるそうです。

私はこのような状況が生まれている一つの原因として、パズルで得られるような『自分で考える力』が養えていない、ということが大きく影響していると思います。

そもそも、丸暗記で点数が取れてしまうような仕組みが、小学校教育から中学校まで、ずっとあるのが大きな問題なんですよね。その最たる例が、速さの計算で使用する「みはじ」や割合計算の「くもわ」だと思っています。

実際、計算の本質がわかっていなくても、このような公式を丸暗記し、問題で与えられた情報をあてはめるだけでテストでは点数が取れてしまう。そして、本当に内容を理解しているのかもわからない状態で、良い点数という太鼓判を押されると、結果として勉強の本質を勘違いし、自分の頭で考えるということを知らないまま育ってしまう。

それが中学高校で、きちんと内容を理解して自分の力で考えなければ解けないような問題が出てきた時に、対応することができない、という状況を生み出しているのだと思います。

そしてパズルは、今の教育では養うのが難しい、「考える力」をしっかり鍛えることができるツールであると私は考えています。パズルのような問題が小中学校の教育現場でも扱われるようになれば、大きく変わってくると思うんですけどね。

-今更なのですが、そもそも“どこからどこまでがパズル”なんですか?

それはとても難しい質問で、私も博士論文の中で一番大きなテーマとして扱っています。基本的には「論理的に解くことができる挑戦的な角度から出される問題」と言われています。

クイズとパズルの違いを考えるとわかりやすいかもしれません。クイズは、知識があれば解けるけど、知らなければ絶対に解けない問題。一方、パズルは、知識がなくても解ける可能性があるし、知識だけでは解けない可能性がある。

知らなくても諦めずに、時間をかけて自分の頭で考えれば答えを導き出すことができる可能性のある問題は、パズルだと思います。

ですから、一般的にクイズと称される「なぞなぞ」も、私の定義ではパズルなんです。予備知識がなくても解ける可能性があるので。


>> 次頁「パズル教室が可能にする教育。」

 

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