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好きだからこそ命を奪う。“京大院生×ハンター”古賀達也に、狩猟と森林の現実について伺う。

Writer|川野 紗季
  • 読了目安時間:7分
  • 更新日:2019.6.26

古賀達也、京都大学農学研究科、修士1年。森林人間関係学研究室に所属し、森林政策について研究する傍ら、シカのハンターとしても活躍する。「好きだからこそシカの命を奪う」、彼のシカへの思いと環境問題について、解決するべき社会課題も踏まえた見解を伺いました。

「いつかアラスカでエルクを倒す」から始まった狩猟の道。

-まず、どうして狩猟の免許を取ろうと思ったのか、きっかけをお伺いできますか。

元々、なんとなく生態系とかが好きで、農学部の森林学科にいたということもあるんですけど、大学2回生の冬に、読んだ村上龍の『愛と幻想のファシズム』という本がきっかけですね。その中で日本人のハンターがアラスカでエルク(アメリカアカシカ)という巨大な鹿を狩猟することを生業としていたんですが、それがとても格好良くて。

その時あんまり自分自身、目標とか何もなかったから、「よし、僕も猟師になってアラスカのエルク倒すのに人生賭けてみるか」と思ったのが始まりですね。

-エルクってどういう鹿なんですか?エゾシカみたいな?

いや、エゾシカとは種類が違って、とても巨大で、車が衝突したらドライバーも死ぬくらいの巨大な鹿ですね。毎年アラスカでも人間に被害が出たりしてますね。(エルクの大量発生は、ヤナギ類を初めとした植生の消滅、裸地の出現など生態系への影響がとても大きいとされている。)

-じゃあ鹿が憎いみたいな感情があって狩猟をという感じですか?

いや、逆で、鹿は大好きなんですよ。狩りたいのは狩りたいですけど、それ以上に鹿のことキレイだなと思う気持ちの方が強いです。ハンターっていうと、何か残酷で、動物を殺すことを楽しみにしてるみたいなイメージをもたれがちかもしれないですけど、そうじゃなくて、僕は鹿のことを誰よりも“愛している”と言えますね。

猟師の一般的なイメージってやっぱり、「動物が憎くてやっている」みたいなものがあるかもしれないですけど、僕の周りの猟師も同じように動物が好きだという感情があってやっている人ばかりです。自分が獲ったやつですけど、こういう骨格とか、とっても綺麗だなと思うんですよね。

-すごいですね…。これはどういう猟でとられているんですか?

これは、罠ですね。もちろん罠をかけるだけでも免許がいるので、僕も当然、狩猟免許を持っています。猟の流れとしては、罠はいろんな種類があるんですが、くくりわなを使ってあしを固定して、そのあとロープをかける という感じですね。

イメージとして、銃の方が危ない(誤射するなど含めて)というものがあるかもしれないですが、罠も同じように危険です。例えばイノシシって、下からもぐりこんで突き上げるように攻撃してくるんですけど、一度その牙が右半身をかすめたこともありましたし。

-「狩猟」って私が生きてきた中であまり馴染みのない言葉でイメージが全くつかないのですが、そんな危険を冒してまで続けるモチベーション ってどこにあるんですか。

「狩猟」はシカやイノシシの個体数が爆発的に増加している今、森林を守るために絶対に欠かせないものなんです。同時に、僕は鹿を本当に美しい生き物だと思うし、本当に大好きなんです。これはほとんどの猟友会の方に共通していると思います。一般的なイメージとは全く逆ですよね。

「狩猟が趣味」と聞くと、どうしても生き物の命を奪うという側面が強いので、「残酷」というイメージを持たれがちですし、殺すことに楽しさを覚えるという風に思われているかもしれません。でも実際はこれと全く正反対なんです。


>> 次頁「約92%の“捨てられるだけの命”をしっかり使い切れる体制に。」

 

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