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自分を見せ、自分を知る。伊藤三時の模索する「自己表現」という生き方。

Writer|中村 達樹
  • 読了目安時間:9分
  • 更新日:2020.3.24

「障害」をどう使うか

-ここで大きく話題を変えます。三時さんは双極性障害(躁鬱)や広汎性発達障害などを公表されていますが、それを公表されることで生活はどう変わりましたか。

案外悪い影響はなかったですね。親しい人ほど心配ゆえに自分を病人扱いしてくる、という部分はありますが、普段は話のネタにもできますし、公表したことで特に弊害があったわけではないです。

それどころか、特に双極性障害に関しては、周囲に伝えたことによって「三時ちゃん今日元気過ぎない?」と声をかけてもらえるようになり、自分の躁状態やうつ状態に気づけるようになったので、むしろ伝えてよかったと思っています。

-それを公表するに至ったきっかけはどこにあるのでしょうか。

一つの理由として、「こんなに病気だらけの人間でも生きているし、活動してもいい」と伝えることで、人を元気づけたいという思いがあります。

精神疾患や精神障害のある人は病人だから休まなければいけない、という風潮が私は好きではありません。もちろん仕事を何もせずに延々と遊び回るのは別の理由で問題があるかもしれませんが、たとえ精神疾患でも元気な時には遊んだり、私のように活動したりしてもいいと思います。

そうして精神疾患や障害すら個性として受け入れて、自由に生きていける人が増えればいい、という考えは強く持っています。

-とはいえ、それを個性として受け入れて生きていくのは大変なようにも感じます。

そうですね。そういったいわゆる「病気」を個性だと言うのであれば、何でも「病気」のせいにしてはいけない。どれだけ面倒でも、その面倒臭さが「病気」のせいでも、お風呂に入ったりお皿を洗ったりといった最低限のことはしなければ生活できません。そういったことは、可能なのであれば積み重ねで克服していかなければいけないと思います。

また何でも「病気」のせいにして、自分に向いているか否かだけで物事を判断していては、自分の人生の方向性を自己決定できなくなってしまうでしょう。

私は「病名」をどうしても苦しい時に使う一種の「伝家の宝刀」だと考えています。普段は極力自己責任の下に生活しておいて、どうしても塞ぎ込んでしまって何もできない時に「今日はもうダメだから美味しいものを食べて寝よう」と割り切ったり、「仕事を休ませてください!」とお願いしたりする際に、「双極性障害」という語を使うといった具合です。

もっともその伝家の宝刀、諸刃の剣をどう使うか、という考え方の部分は、自分で決めるほかないと思います。

-「障害は社会の問題か、自己責任か」という問題がよく議論されますが、その点においても個人の考えが反映されてよい、という考え方でしょうか。

そうですね。お互いに配慮し合って気分良くなればいいのに、と思います。自分でどうにかしなければならない時と社会が合わせるべき時は両方ありますし、それは人と状況によっても異なるはずです。

最低限のことだけ社会のルールにして、そこから先は個人間の合意で決めればよいはずなのに、最近はその「最低限」が随分過剰になってきていないか、それは本当に「最低限」なのか、という問題意識はあります。

所詮障害というのは、「背が高い/低い」と同じレベルの個性でしかないと思います。背の低い人が背の高い人に棚の上のものを取るように頼んだり、脚立を使ったりすることは、恐らく多くの人が自然に受け入れられますよね。障害を個性として認めても、何もかも自己責任になるわけではないと思うんです。

ところが「障害」の話になると、急にかわいそうだと思われたり、接し方まで全てルールで定められたりしてしまう。そこまで決めなくとも普段通りの気づかいで十分なのに、と日々感じています。

-ありがとうございます。最後に三時さん自身の将来設計についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

今の生活は実家暮らしで何とか成立しているようなギリギリの生活ですし、今続けている表現活動も始まりがあればいずれ終わりが来るものだと思っています。アイドルには当然解散や卒業がありますし、同人小説もいずれ就職すれば仕事の都合で書けなくなるかもしれません。

同人小説と被写体、役者の活動はできる限り続けたいですが、その利益だけで食べていくのは余りに非現実的だと考えています。あくまでそれらは自分の感情と表現、実存への投資だと割り切っていますね。もっともあわよくばカフェを開いて生計を立てたい、といった自己表現への野望は抱いているので、それを目標にしていこうと思います。

-本日は貴重なお話をありがとうございました。今後も三時さんがご自身の夢を叶えられ、また多くの方々の希望となって下されば幸いです!

 

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