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向こう見ずなかっこよさを。“異質”な学生がクラウドファンディングで切り拓く道。
Writer|美馬 翔希 |
- 読了目安時間:7分
- 更新日:2018.10.25
徳山彰一、京都工芸繊維大学デザイン建築学科デザイン専攻。経済的事由からくる制作の限界を超え、異質なデザイナーとなる為、クラウドファンディングに挑戦する。自ら“負け続けてきた”と語る彼の過去最大のチャレンジに迫る。
圧倒的な存在感と美しさを持つ作品を作るために。
-本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。今回、卒業制作のためにクラウドファンディングをされるということですが、現在どういった分野を専攻されていて、どのような制作に取り組まれているんでしょうか?
専攻はプロダクトデザインですね。立体物のデザインを専門に勉強しています。卒業制作は”侘び”と”寂び”を具現化した椅子を制作しようとしています。椅子は製品なので、使えてこそ価値のあるものなのですが、その美しさや存在感で評価されるようなものを作りたいんです。
-かなり難しいですね・・どのような成果物になるイメージなのでしょうか?
そうですよね、確かに想像しづらいと思います。そういう美しさ、存在感のある椅子の代表作としては倉俣史朗氏の『ミスブランチ』という作品があります。
(ミスブランチの写真)
この椅子にはバラが空中で止まって見えるような工夫が凝らされているんですね。それにより時間が止まっているかのような非現実を想起させ、圧倒的な存在感を放っているんですよ。
たぶん座りづらいんですが、“使えてこその価値”というより、こういった“圧倒的な存在感を持つプロダクト”を作りたいと考えています。
卒業制作に話を戻すと”侘び寂び”という概念を言葉で説明するのではなく、座ってみたり触ってみたり、と感覚で伝えることはできないかと考えています。
-なるほど。プロダクトを感情的価値と機能的価値に分解した時に、椅子のような機能的価値あってなんぼでしょ、というプロダクトの感情的価値に重点を置く製品を作ると。
そうですね。プロダクトデザインの基本は問題解決、つまり機能的価値の向上を基本としているのですが、もう機能的価値を尖らせるアプローチは頭打ちの状態にあると思っています。つまりモノを書くプロダクトとしての鉛筆はあれ以上合理的な形がないんですね。
ただ僕はそこに感情的な価値を加えると進化はあると思っています。だからこそ今回の卒業制作も感情的価値を尖らせるようなアプローチを取ろうと考えていますね。
-勉強になります。今までの制作物を教えていただいてもよろしいですか?何が卒制テーマに影響しているのかなと思いまして。
これまでにスピーカーとラグなどを制作してきました。僕は大学入学当初から考えが変わっていて、初期のスピーカーはかなりマーケティング的な観点からターゲットに対する機能的な価値、つまり市場価値を追求していました。
現在とはかなり異なっていますよね。一方で3回生の時に制作したラグは感情的価値に重点を置いています。長期的に見ると、徐々に感情的価値に興味が出てきた経緯もテーマに影響していると思います。
もっと直近で言いますと、自分の原点に立ち返って考えたところが大きいです。卒業制作は自分のルーツを込めて作るものだと僕は認識しています。例えば奈良県に実家のある友人は家業の林業との関わりから、その地域の木材を使った作品を、バンドをやっている友達なら音楽業界に何か残したいというモチベーションで作品を作っています。
そこで、僕の原点はどこかと考えた時に、日本人というルーツに立ち返ることになりました。その中でも大学生活を4年間過ごした京都に原点を見出して、”侘び寂び”というテーマにたどり着きましたね。
>> 次頁「ポジティブな異端児であり続けること。」
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