社会人インタビュー
京大、篠原教授に訊く「マイクロウェーブとベンチャー、時々若者の未来」1/3
Writer|妹尾 脩平 |
- 読了目安時間:9分
- 更新日:2017.8.10
技術革新の必須条件は、確実なビジネスモデル。
-特区での実験で実用化へ備えつつ、法整備がなされるのを待つ、といった方針なのですね。
そうですね。日本では法制化が今後の鍵になっています。そこで私は研究者として研究を行いつつ、産学官連携の旗振り役となることにも力を注いでいます。「学」に対しては学会を活用することで研究分野の裾野を広げ、「産」に対してはコンソーシアムを組織して数十社の企業を集めることで、「ワイヤレス給電業界」を形成していっています。
そして「官」に対しては、先程の話のように特区を活用させてもらうなどして連携を深めていっています。「産官学」が欠けることなく、全てが一体となってワイヤレス給電分野を深めていくことが重要ですね。
-ご説明ありがとうございます。では、実際に電波暗室の外で実験を進められた中で、「失敗」、また「成功」したことは何かございましたでしょうか。
はい。「失敗」としてよくあったのが、充電されるはずなのに充電されていないということですね。精華町の役場の人から連絡を頂いて、「充電されてないです」というのがあります。(笑)
「日常の環境」での実験なので、センサーが倒れたとか、人が動かしたとか、あるいはコンセントが何故か抜けちゃったとかが原因で給電が止まることがあるんですよね。
「成功」に関してだと、電波が「混じっちゃう」という苦情が一件も出なかったことですね。携帯の電波が通じなくなったり、無線LANが止まったり、といったことは一切なかったです。もちろん電波の干渉が起こらないことを理論上は証明できていたんですが、それを日常の環境においても確認できたのは大きな成果だと思います。
-ありがとうございます。外界での実験で研究の成果が一定得られたとのことですが、今後の実用化の展望に関しては関してはどのようにお考えでしょうか。
そうですね。それこそ、ワイヤレス給電の技術を活用したレンタサイクルなどの事業化を考えてはいるのですが、そうなると「研究」というよりかは「ビジネス」の分野となるので、あなたがた経済学部の専門になると思うんですよ。
乗り捨て型レンタサイクルって、日本で全く導入されていないわけではないですよね。でも、あまり普及していない。これってきちんとしたビジネスモデルが構築されていないからではないでしょうか。
例を1つ挙げると、過去に埼玉でワイヤレス給電のレンタサイクル事業が研究者発で始まったんですが、最近あまり話を聞きません。使用している技術は異なるのですが、ワイヤレス給電仲間ということで私も期待していた事業だったんですけれども。
やっぱり、事業化していくためには「技術」だけではなく、きちんとしたビジネスモデルを用意することが大切だと思うんです。これは私の持論なのですが、自分だけ儲けても仕方がないし、仮に一瞬だけ儲かったとしてもすぐに潰れてしまう。
なので、大学発でベンチャー事業化して自分だけ儲けるというよりかは、産学官を連携させてワイヤレス給電分野のパイそのものを大きくしていくといったことが重要だと考えています。
外部からの事業化に関する声も大きく、最近では「日本の大学は事業化で儲けるべきだ」といった半ば幻想的な議論も盛んになっていますが、日本で成功している大学発ベンチャーってあまり聞かないですね。
確かに、大学発ベンチャーが立ち上がった際にはニュースになるんですが、その後そういった会社が社会にインパクトを与えたといったニュースは余り耳にしません。
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