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社会人インタビュー

京大、篠原教授に訊く「マイクロウェーブとベンチャー、時々若者の未来」3/3

  • 読了目安時間:6分
  • 更新日:2017.11.15

マイクロウェーブの研究内容から大学発ベンチャー、“1万年人類を長く繁栄させる”ための「宇宙発電」を前編中編でお送りしてきました。最終回の本エントリでは、学生を含めた若者のあるべき姿を、自身の学生から研究者への転換の体験談を交えて語っていただきました。

専門分野を持ちつつも、ジェネラリストとして活躍してくれる人材に。

-僕は文系の人間なのですが、経済学も社会科学です。科学と人間が不可分ということには深く同意します。科学そのものを否定してはならないですよね。例えば「キケンな技術」が出てきた際に、その技術そのものを否定するのではなく、「キケンだからどのように活用していこうか」と考えていくべきだと思うんですよ。

私も全く同じ考え方です。マイクロ波によるワイヤレス給電の例だと、安全なシステムを開発するのですが、原理上マイクロ波すべてが全く安全というわけでもないんですよ。

マイクロ波は電子レンジにも活用されている電波なので、大電力のワイヤレス充電設備の場合、送受電の間に人間が入っちゃうと、危ないと言えば危ないんです。そこで、そのリスクを考慮した上で、そうならないように、研究を進めています。

日本人は、このリスク管理が苦手に見えますね。これだけのリスクに対して、これだけのリターンが得られるといった計算が。そういったリスク管理をしつつ、研究していくことが大切だと思っています。

また、これは日本人だけではないのですが、人間は「便利さ」に一回慣れるとリスクの部分が気にならなくなるんです。気がついたらワイヤレス充電を日常生活で使いまくっている、となれば人間はワイヤレス充電を手放せなくなります。

ちょっと昔だと、「携帯電話から発される電磁波が危ない」と言われていたのですが、今ではあまり気にしていませんよね。コンタクトレンズも考えてみると異物を目につけることになるので危なそうですが、それでも慣れちゃうと皆気にせずに使うじゃないですか。

-ここからは「教授から見た学生」を議題にお話をお伺いしたいです。まずは理系で院進する学生に関してです。彼らは、大学院で個別の研究テーマに取り組み、その分野のプロフェッショナルとなるわけです。一方、全員が研究職に就くわけではなく、むしろ、銀行などの研究分野とは関連の無い分野の職に就くことが大半です。篠原教授は、この現状をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

研究職に就くか就かないかは、僕はどちらでも良いと考えています。私の研究室のテーマ自体がニッチな分野なので、取り組んでいる会社が少ないというのもありますし。

私としては、研究テーマというより、研究に取り組む上での「手法論」とか、「物の考え方」といったものを社会で活用してくれたらいいなと考えています。研究へのアプローチの方法・考え方であったりとか、人と研究を進める中でグループでどう協働していくかであったりです。

スペシャリストとジェネラリストという考え方がありますが、スペシャリストだけだと分野って広まらないんですよ。スペシャリストから少しハミ出たジェネラリストたちが居るから、分野の裾野を広げることができます。

専門分野を持ちつつも、ジェネラリストとして活躍してくれる人材に学生にはなってほしいですね。そうすると研究分野の裾野は広がってくれます。社会に出てからワイヤレス給電のデバイスを使ってくれたり、あるいは銀行に行って僕に融資してくれたり。(笑)

-そうだったんですね。理系の教授として、専門分野を持ちつつも研究職に就くことが余り見受けられない現状を苦々しく思っているのでは、と考えていたのですが、そうではないようですね。

まあ、これはあくまで僕の考えですけどね。志が高い先生の中には、この現状を嘆いている人も居ます。どんな職に就きたいか学生に聞いて、「残業が無くてお金が貰えたらいいです」と言われてガックリしたとか。(笑) 私は今の時代そうなって仕方ないと考えているんですけどね。


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