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社会人インタビュー

研究職で得た知見を新規事業支援へ。「インキュベーター」の役割とは。

Writer|ビックイヤー編集部 Writer|ビックイヤー編集部
  • 読了目安時間:12分
  • 更新日:2017.01.26

十分にビジネスと割り切ることができなかった

-前職は研究職(R&D)だったとお聞きしています。

はい、実験に基づく事業開発をしていました。人柄の良い人が多く、中性的なポジションを取ることができていましたので、良い意味であまり女性だからと遠慮されることもなく、仕事も対等にやらせて頂けていました。

-女性ということで大変だったり、損をしたなと思うようなことはあまりなかったということでしょうか?

私は逆に得をしたことの方が多いように感じています。例えば男性同士で言っていたら角が立つようなことも、女性ということで比較的言い易い環境だったと思います。

-一番想い入れのあるプロジェクトなどありますでしょうか?

2011年頃に新規事業の立ち上げに携わったことですね。その頃、食品事業は食品油の安全性の問題が発生し、売上が激減しており、新しいことを始めなければならない状態でした。そのような背景もあり、当時たまたま生活習慣に関する研究を行っていた私は、その研究を基に健康情報の提供などを行うヘルスケア支援サイトのビジネスに関わることになりました。海外の事例なども沢山調べましたし、社内外問わず様々な方と情報交換などもしました。また、海外の学会に参加したりも積極的に行いました。私はこの仕事が凄く面白くて、9年間在籍した前職の中で、一番頑張った仕事でした。しかし、新規事業としての売上げの見通しが立たず、徐々に規模は縮小していき、道半ばで、私も別な仕事に異動になりました。ただ売上げこそ作れませんでしたが、このビジネスを通して得られたデータで新商品となりうる種を沢山生みだしていたという自負はありました。なので、その時、もっと会社がリソースを掛けてくれていれば、という想いは今でもあります。仮に新商品の設計までさせてもらえる権限が私にあればまだまだ色々なことができたと今でも思いますが、なかなかそういったこともできず、周囲に遠慮をしてしまいました。

-会社がリソースを割かなかった理由は何だったのでしょうか?

私が説得し切れなかったということだと思います。もっと考えや事業性を主張できていれば、上手く進んだかもしれません。私の性格だと思うのですが、日頃から仲良くして下さり、お世話になっている上司や先輩の方に面と向かって「それは違います。」と強行に主張できませんでした。やはり新卒の会社って独特の家族感のようなモノがあるように思いますし、十分にビジネスと割り切ることができませんでした。

-やはり大きな会社ですし、社内の立ち回りは大変そうですね。9年も在籍された会社を退職された原因はその辺りにあるのでしょうか?

どうでしょう。新規事業の立ち上げに携わり、社外の人とも沢山交流したことで、外の世界が魅力的に見えてきたというのもきっかけの一つだと思います。しかし、前職は自分の夢を実現する場所としてベストであると思っていましたので、なかなか辞める決心はつきませんでした。

-では、最終的に辞めると決断された理由は何だったのでしょうか?

実験データの出し方について合わなかったことですね。実験を行う際、有効なデータが出ないことを理解しているのに、個人の能力に依存するような高度かつ属人的なデータの出し方を続けようとしていたことで、会社の未来を憂慮しました。これだけ大きな会社で、商品を一回世に出したら、同じような仕組みでずっと回していかないといけないのに、神業みたいにデータを出せと言われることがやり方としておかしいとその時は思いました。また、自分が始めたテーマは、難しいイシューを扱っており、形にするまでに10年はかかると思いました。そこで「これ以上は・・・」と思い、最終的に決断しました。一部は、正しくはあるのですが、もう少し工夫することもできたかなと思いますね。

人と人の繋がりから成長産業を新たに生みだしていく

-退職後、すぐに現職に移られたのでしょうか?

いえ、辞めてしばらくは友達の会社を手伝ったりして、フラフラしており、現職に就いたのは半年後くらいです。

-転職活動をされた際、現職以外の企業も検討されたのでしょうか?

現職のシンクタンクともう一社、ドイツの化学メーカーを受けました。日本だと三菱化学くらいの規模な会社で、将来の幹部候補のポジションでした。現職と悩んだのですが、最終的にこれまでの人生がより活きる、ヘルスケア事業への間口が広い現職を選択しました。

-現在、転職されてどのくらい経ったのでしょうか?

転職して2年2カ月ですね。

-転職されて良かったと思われますか?

はい。あのまま居ても新規事業の担当にはなれたかもしれませんが、今のように人と人の繋がりから成長産業を新たに生みだしていくようなことはできなかったと思います。ただ、大好きだった前職で結局はあまり会社の役に立てなかったことは今でも心残りです。前職の食品事業で数十〜数百億円くらいの規模のビジネスを幾つか生み出したかったのですが、それも実現できませんでしたし・・・。


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