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社会人インタビュー

昆虫に倣え!?学問の際(きわ)で奮闘する、若手研究者が見据える次世代ロボットビジョン。

Writer|ビックイヤー編集部 Writer|ビックイヤー編集部
  • 読了目安時間:11分
  • 更新日:2019.1.15

生き物の世界と電子工学の世界、実は共通点も多い!?

-お話をお伺いしていると、神経模倣と言われる研究分野は情報科学の分野だけに収まりそうにないですね。

仰る通り、色々な研究分野に跨っています。このような研究分野を“ガクサイ”分野と呼びます。

-ガクサイ?

“国際”は国の際(きわ)ですよね。それと同じく“ガクサイ”は学問の際(きわ)と書いて“学際”、つまり複数の学問が関係する、学問の境界ということです。

一般的に学際分野の研究者は少なく、神経模倣の世界でも研究室の長として活動している方は、数えたことはないのですが、日本に20~30名ぐらいだと思います。もちろん、その方々にブランチしている研究者がいますので、もう少し多いかもしれませんが、それでも研究者が少ない分野だと思います。

-どちらかと言えばマイナーな研究分野ということですね。

そうですね。

-では、奥野先生がマイナーな研究分野である神経模倣を研究されるようになったキッカケは何だったのでしょうか。

大阪大学(以降、阪大)での修士課程時代に、生き物の研究、具体的には神経生理学を研究されていた八木哲也先生の講座に所属したことがキッカケでした。

当時の私は電子工学科の学生だったので、生き物とは無縁な研究分野にいました。そのため、阪大以外の大学であれば八木先生の講座に出会うことはなかったと思います。

-と言いますと。

通常、電子工学系の学部や学科には生き物に関する講座はないのが普通ですよね。

-確かに、電子工学と生き物、つまり生物学的な授業は結び付きませんね。

そうなんです。でも阪大の電子工学科は少し変わっていて、必ず生き物に関する講座を1講座開講するという、ポリシーというか決まりが当時からありました。

-阪大の電子工学科にそのような決まりがあったんですね。

私が生まれるもっと前から生物に関連した講座はあったようで、伝統のようなモノだと思います。

-そのような決まりがあったため、八木先生の講座に出会われたと。その結果、生き物、つまり生体にも興味を持たれたということでしょうか。

はい、その通りです。

-特にどのような点に興味を持たれたのでしょうか。

先ほどの昆虫の話にも通じるのですが、生体を構成する神経回路は、実は電子回路に比べると非常に遅い動作しかできない仕組みなんですね。速くても数100Hz程度です。

一方、電子回路はご存知の通りGHzのオーダーで動作できます。つまり、神経回路は電子回路に比べ1,000万倍遅いシステムになります。

にもかかわらず、神経回路、つまり生き物は空間認識や音声認識などのリアルタイム処理を難なくこなしている、この事実に非常に驚き、興味を持ちました。

-生き物は本当によく出来たシステムで構成されているんですね。

そうなんです。

なので、この優れた神経回路のメカニズムを電子回路に応用することが出来れば、より良いモノができるのではないかと考えるようになり、神経模倣の世界に足を踏み入れました。

-なるほど。それにしてもなぜ、阪大の電子工学科にはこのような伝統があるのでしょうか。

私も経緯までは知らないので、あくまで勝手な想像ですが、神経回路と電子回路には実は共通点も多いんです。

-共通点?

例えば、電子回路の教科書などでよく出てくる半導体のpn接合というモノがあるのですが。

-大昔に勉強したような・・・汗。

要はダイオードなんですが、このpn接合を表す数式と生き物の細胞膜の中を流れる電流の数式とがほぼ同じなんです。

冷静に考えれば、どちらも電位の勾配と粒子の濃度で決まるので、数式が似るのは当然と言えば当然なのですが、電子工学だけ、あるいは生体だけを研究している人だと案外この事実を知らないことも多いと思います。

少し話が逸れましたが、このように生き物の世界と電子工学の世界には共通点も多く、実は相性が良い組み合わせなんですが、それに早くから気付いた先人の方が、阪大の電子工学科では必ず生き物に関する講座を開講するようにと決められた、そしてそれが今日まで残っているのではないかと。

-ありえそうなお話ですね。


>> 次頁「ビジネス感覚のない研究者は淘汰されていく。」

 

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