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社会人インタビュー

昆虫に倣え!?学問の際(きわ)で奮闘する、若手研究者が見据える次世代ロボットビジョン。

Writer|ビックイヤー編集部 Writer|ビックイヤー編集部
  • 読了目安時間:11分
  • 更新日:2019.1.15

ビジネス感覚のない研究者は淘汰されていく。

-奥野先生は3年ほど前に、阪大から大阪工業大学(以降、大工大)へ移られたということですが、それは転職ということですか。

はい、民間企業の転職と同じです。研究者向けの転職サイトJREC-INというサービスがあって、そこにどこの大学のどのポストが空いているか、要は求人が一目で分かるようになっています。

そこから希望する求人に応募して、書類審査があって、面接があって、と民間企業の転職と変わらないステップを踏みます。

JREC-INは誰でも閲覧できるので、研究職に興味のある学生は一度覗いてみるといいかもしれません。

-奥野先生は阪大と大工大を経験されたわけですが、研究環境などに違いはありましたか。

そうですね。一番大きな違いは、私のような若手研究者でも自身の研究室を持てる環境かどうか、という所ですね。

-詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

阪大のような歴史の深い国公立の場合、若手研究者は教授が持つ研究室に所属し、研究活動を行うことが一般的です。

一方、大工大のような私学や一部の地方国公立は教授、准教授、講師などに関係なく、各々の研究者が自身の研究室を持ちます。

-なぜ、国公立と私学でこのような違いがあるのでしょうか。

歴史の深い大学では、複数の教員で一つの研究室における研究と教育を行う、というシステムが昔から確立されてきました。特に私の所属していた学科では、各研究室が高価で大規模な実験装置を使っていましたから、複数名での協力が必要だったのだと思います。

また、研究活動に必要な資金の調達にも違いがあります。

国公立の場合、研究活動に必要な資金は研究者自身で確保する必要があります。例えば日本学術振興会の補助金や民間企業との共同研究などです。

そのため、単に研究ができるだけでは不十分で、自ら資金調達ができないと国公立では研究活動を続けられません。国からの予算は削減される一方なので、最近はこの傾向が顕著です。

しかし、博士号を取得したばかりの若手研究者が研究だけでなく、資金調達までできるかというと、そういった経験のない研究者がほとんどでしょうし、難しいのが正直なところだと思います。

-修士課程、博士課程と研究に力を注いできた人に、いきなり資金調達といっても難しいのは頷けますね。

そこで、若手研究者は教授に師事するカタチで研究室に所属し、教授が獲得してきた実験装置と研究資金を基に研究活動をしつつ、資金調達にも少しずつ慣れていく、という流れが一般的になったのだと思います。

一方、私学では大学が最低限の研究資金を各研究者に付与するのが一般的です。そのため、研究者自らが資金調達を行う必要性が低く、若手研究者でもなんとか研究室を切り盛りできるため、研究者毎に研究室が設けられているのだと思います。

-そのような違いがあったんですね。やはり、自身の研究室を持てる私学の方が研究者としては活動しやすいのでしょうか。

そうですね。国公立の場合、研究室の方針や教授の意向などに配慮した上で、自身の研究活動を行う必要がありますので、自分の研究室を持てる私学に比べ、自由度が減るのは確かだと思います。もちろん所属する研究室によりけりではありますが。

-なるほど。

ただ今後は私学であっても、国公立と同じように研究者自らが研究資金を調達することを求められるようになっていくと思います。

-それはなぜでしょうか。

少子化による学生数の減少です。学生数が減れば当然、大学の実入りも減りますので、各研究者へ付与できる研究資金も減少していきます。

そう遠くない将来、国公立、私学等に関わらず、自ら研究資金の調達ができる研究者でないと研究室を維持できなくなる、そんな時代が来ると思います。

-研究者であっても、ビジネス感覚のない者は淘汰されていくと。

遅かれ早かれ、そうなると思います。ですので、優れた研究はするものの、ビジネス感覚を持たない研究者や、ビジネスにはつながりにくい基礎研究の研究者を生かすシステムも、今後必要になってくると思います。


>> 次頁「人生のハンドルを自分で握る勇気を持って欲しい。」

 

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