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スキーで世界に挑み、学問で世界を知る。京大生・本間樹良来の挑戦。

Writer|中村 達樹
  • 読了目安時間:9分
  • 更新日:2019.11.28

本間樹良来。京都大学農学部3回生。京都大学スキー部女子部主将・スキーオリエンテーリング日本代表として活躍する傍ら、イスラエルとパレスチナ自治区をフィールドに途上国の経済開発問題を研究する。労苦をいとわず世界に挑み、世界を知るため奔走する中で培われてきた、彼女の国際感覚に迫る。

スキーで強豪校に、そして世界に挑む

-本日はお忙しい中ありがとうございます。まず、「スキーオリエンテーリング」とはどのような競技かお聞きしてもよろしいですか?

はい、「スキーオリエンテーリング」は地図とコンパスを頼りに雪山の中のチェックポイントをスキーで順に回ってゴールを目指し、そのタイムを競う競技です。日本に伝わってきたのは50年ほど前なのですが、競技として普及され始めたのは20年ほど前からなので 、認知度はまだかなり低いと思います。

競技は距離別にスプリント・ミドル・ロングの3種目に分かれていて、スプリント競技は20分前後で終わりますが、ロングになるとゴールまで2〜3時間かかることもあります。その場合は競技中の栄養補給も大事になってきますね、頭を使うので。

-具体的にはどのように頭を使いますか?

まずは集中力ですね。山の中を常に動き回っているので、地図とコンパスがあっても集中を切らせばすぐに自分の居場所がわからなくなってしまいます。そうならないように常に頭を働かせる必要があります。

またチェックポイント間のルートは複数あって自分で選べるので、スキーの技術だけでなくルートの選択で頭を使います。多くの場合、広くて勾配の緩い道は遠回りで、近道は狭くてアップダウンが激しくなっています。そういう場合、等高線と道の長さの関係を見極めて、さらに自分のスキー技術も考慮に入れた上で、どちらが早く着ける道なのか考えていかなければなりません。

自分の場合、スキーは比較的得意なので、なるべく広くて滑りやすい道を選んで、遠回りした分のロスはスキーのスピードで補うようにしています。その辺りの選択には個人差がありますが、いずれにしてもスキーが上手いだけ、地図を読むのが上手いだけでは勝てないので、その両方の技術が必要になってきます。

-本間さん自身も、その辺りの難しさは感じていますか。

はい、トップ選手はどちらの技術もものすごく高くて驚きます。ただ国際大会に出場して感じたのは、小学生の頃からクロスカントリースキーを続けていたこともあってか、スキーの技術にはそれほど差はないということです。進むコースが偶然一緒になった時は、案外上位の選手にもついて行けたりします。そういった部分では手応えも感じていますね。

-頼もしいお言葉ですね!本間さんはクロスカントリースキーでも素晴らしい成績(国立九大学スキー選手権優勝、全関西学生スキー選手権大会3位)を残されていますが、そこに至れた原動力はどこにあるのでしょうか。

もともとクロスカントリースキーは小学生の頃から個人で続けていたのですが、中学生・高校生の頃は良いコーチ・良い環境に恵まれた強豪校の選手に太刀打ちできませんでした。

そういった選手は強豪の私立大学に行き、そうでない自分はこうして京大に入ったわけですが、ここで強豪の選手もコーチの管理下ではない自由な環境に置かれた今がチャンスなのかもしれない、と思いました。

当たり前に勝つための方法を教えてくれたコーチを失った強豪校の選手は、もちろんその方法を自分で考えて強くなっていく選手もいますが、どうしてもただがむしゃらに練習するだけになってしまう人も多い。

こういう状況下でなら、限られた時間と体力の下で強くなるための最善の手段を考えながら練習すれば、私でも強豪校の選手にも勝てるかもしれない。そう思ってかなり頭を使って計画を立て 練習した結果、実際に何人かの強豪校の選手に勝てたのだと思います。

関西の女子でクロスカントリースキーが一番強いのは同志社大学で、自分は「打倒・同志社」を目標に掲げています。その中で一番意識するのはやはり、「限られた環境で何をやり、何をやらないか」です。ただがむしゃらにやって勝てる相手ではないですから。


>> 次頁「遠い世界を「知る」ことの大切さ」

 

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