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極限の地“アラスカ”での挑戦。京大理学部生が追いかける「オーロラの音」。《後編》

Writer|木原 弘貴 Writer|木原 弘貴
  • 読了目安時間:10分
  • 更新日:2018.2.7

自分が楽しいと思える。だから頑張れる!

—入学前に抱いた「アカデミアの世界で生きていきたい」という情熱をずっと持ち続けられているのは凄いですね。

司さん アカデミアの世界でやっていくことを決意し、勉強や研究をしていく中で、しんどいと感じることは多々あります。

しかし、面白い仮説を自分で思いつき、文献等で調べて、「世界中でまだ誰も自分が考えた仮説を持っていない」と分かった時に得られる高揚感がたまらないんですよね。一度この高揚感を経験すると、その感覚が忘れられなくなってしまいました。

仮に今、自分がしんどい思いをしていたとしても、「またいつかあの時の高揚感を得られるのではないのだろうか?」と思ってしまうんです。たとえは悪いかもしれませんが、一種の中毒みたいなものかもしれませんね。

あと、自分が今も「アカデミアの世界で生きていきたい」と思い続けられている理由がもう一つあります。

高校生の時に出場した生物オリンピックで、同学年でものすごく優秀な男の子に出会ったんです。当時の自分は、彼に対してはまさに手も足も出ないという感覚を抱き、「自分では、彼と対等に議論をすることさえできない」と思いました。

そう思わざるを得ないことがとても悔しく、その悔しさが大学生になった今でも忘れられないんです。

—その彼とは今も交流があるんですか?

司さん ありますよ。ただ、彼は今アメリカにいます。なので会うことはほとんどないですね。彼は非常に優秀で、研究者を志す同学年の日本人の中ではトップを走っていると思います。

自分が寝る前にふと、「彼は今どこまで進んでいるんだろう?」と考えることがあります。

—みなさんも同じように情熱を持ち続ける原動力を持ってるんでしょうか。

天羽さん 僕も、司くんの言った、「世界中でまだ誰も自分が考えた仮説を持っていない」という高揚感は非常によく分かります。僕も高校生の時にその感覚を得る経験をしました。その時の経験が今の自分の原動力になっていると思います。

高冨士さん 私は、純粋に物理が楽しいと思えることが、今も情熱を持ち続けられている理由かもしれません。帰省の際に、物理が好きな父と物理について語り合う時間も楽しいと思える瞬間の一つですね。

そうした時間がより一層、物理を好きにさせてくれているのかなと思います。

藤田さん 私は、今自分が勉強していることを楽しいと感じているのが理由かもしれません。もちろん将来の不安もありますけど、「今自分が本当に楽しいと感じているので、将来も明るいだろう」と楽観視しています。笑

楽観視できるのは、自分の中に、上手くいくだろうという漠然とした根拠のない自信があるからですね。

—それほど夢中になれるものに出逢えたたことはとても素晴らしいことだと思います。では、そんな皆さんの個人としての今後の目標を教えてください。

天羽さん 物理の分野は大きく分けて二つに分かれていて、一つは理論で、もう一つは観測・実験です。簡単に説明すると、理論は主に数式を用いて仮説を考えることを行なっていて、その仮説を実験で検証するのが観測・実験の立場です。

僕は理論の分野に進みたいなと考えています。でも、観測も好きで、趣味としてアマチュア天文学もやっていきたいなと思っていますね。

理論物理学者として生きていくことは大変難しいことであると思いますが、まずはその目標に向かって、普段行なっている自主ゼミを頑張っていきたいですね。

司さん 僕は、勉強を継続していくことに加えて、実験のスキルを身につけていくことを頑張っていきたいですね。また、モットーとして、「フットワークを軽くする」を掲げていて、そこも継続していきたいです。

研究の世界で頑張っているとどうしても、研究室という狭い世界に閉じこもってしまうことになるんですよね。

だからこそ、自分から研究室の外の世界に出ていき、異分野の研究者と交流を積極的にしていきたいと思います。

高冨士さん 私は、小さい頃から理科実験が好きだったことが、理学に興味を持ち始めたきっかけですし、観測・実験の道に進みたいと思っています。そのためにやらないといけないことは多くあると思います。

残りの大学生活をどう過ごすかでいうと、学部内はもちろん学部外の人とも積極的に交流していきたいなと。それこそ、今回の研究をするまでは、司さんのような面白い人の存在を同じ学部であっても全然知りませんでした。

また、今回の研究を通して、多くの先生とお話しする機会をいただけました。そしてその先生達はみなさん、私たちに気さくに話しかけてくださったんですね。

それらは非常に良い経験になり、これからもっと多くの人と話していきたいなと思うきっかけになりました。

司さん 自分しか持っていない視点を持ち、自分が知らない世界のことを考えている人と話し、異なる考え方が混じり合うことで、とても良いアイデアが生まれると思うんですよね。

藤田さん 私は、理論か観測・実験のどちらの道に進むかは決めかねている段階ですね。元々考えることが好きで、理論の道に進みたいと思っていましたが、今回の研究を通して、観察・実験の面白さに気付くことが出来ました。

観測でも、頭で考えるという作業は必要ですし、理論の知識も必要です。

観測するにあたって、「どのように観測を行えば、自分の欲しいデータを得られるのだろうか?」ということを踏まえ、観測方法を考えることも面白いなと感じました。これからの大学生活で言うなら、私もみんなと同じように、自分の世界を狭めることなく、いろんな人と話したいと思っています。

今回のオーロラの音に関する研究に関しても、同じサークルの文系の友人に話したりすると、その友人が自分では思いつかないような仮説を考えてくれたりして、「文系・理系関係なく、色んなアイデアを持っている人がいるんだな」と実感しました。そのため、これからは同学部の人はもちろん、他学部の人との繋がりも大事にしていきたいと思っています。

—最後に、京都大学理学部に進学することを考えている中高生に対して、皆さんの経験も含め、一言頂けるでしょうか?

天羽さん 少し怖いかもしれませんが、「人生を数理科学に捧げる覚悟があるなら、京大理学部に行くべき」ですね。

司さん 確かに無責任に京大理学部への進学を勧めることはできないですね。中途半端の気持ちで来ると、入学後に後悔するリスクが他の学部よりも高い場所だと思いますし。

藤田さん 私なら「理学が好きなら京大理学部に進みなさい」と言いたいですね。

天羽さん 実は今、自分の弟が高校二年生で、理学部に進むか工学部に進むかを悩んでいたので、弟からアドバイス求められることも多かったんです。

現実的な話になりますけど、博士まで進むなら親にどの程度金銭的負担がかかるなど心配なこともあります。

司さん 僕は「本当に理学だけをやっていく覚悟があるなら京大理学部に行くのが良い」と声をかけたいですね。

仮に今の成績や実力が伴っていなかったとしても、理学を一心にやり続ける情熱があるならば、アカデミアの世界でも生き残れるのではないのかと思います。

他人から自分の好きなことをどう言われようと、たとえ「役に立たない」と言われても、自分がやりたいと思うことだからやるというスタンスで、コツコツやり続けるだけのモチベーションがあるならば、アカデミアの世界で十分にやっていけると思いますよ。

高冨士さん 天羽さんと司さんの二人と比べると軽い印象を受けるかも知れませんが、「あらゆる選択肢がある中で、それでも理学部に行きたいと思うなら、来ても良いんじゃない?」と言いたいです。

藤田さん 私は、実際に行ってみないと理学部が自分に合うかなんて分からないし、少しでも興味があるなら素直に進んだ方がいいと思いますね。

-心のこもったメッセージ有難うございます。本日はお時間ありがとうございました。皆さんの今後のご活躍を心からお祈り申し上げます。

 

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